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45.校舎裏にて
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「それで、校舎裏か」
「ええ……」
「冴えているじゃないか、イルリア嬢。確かにそこが一番あり得そうだ」
「いえ、そんな……」
私とマグナード様は、ブライト殿下にも声をかけて校舎裏に向かっていた。
廊下を走るのはあまり良くないのだが、今は仕方ない。非常事態故に、校則などは考えないようにしている。
「さてと、それでその校舎裏だが……」
「なっ……!」
「これは……」
校舎裏にやって来た私は、目の前の光景に固まっていた。
そこには、二人の男性と一人の女性がいる。それだけで良い状況ではないことは理解することができるのだが、それにも増してひどい状況だった。
一人の女性は、猿轡をかまされて横たわっている。
彼女は虚ろな目をしている。意識はあるが、私達が来たことは恐らく理解できていないだろう。
そんな状態になったのは、そこにいる二人の男性が彼女に危害を加えたからだ。それは、考えるまでもないことである。
「おい、ムドラス。カモがネギをしょってきたみたいだぜ」
「あれは……イルリアとマグナードか」
「王子のブライトもいやがる。ナルネア様をあんな状態にした奴らだ」
二人の男性――ヴォルダン伯爵令息とムドラス伯爵令息は、私達に対して鋭い視線を向けてきていた。
こうして二人の顔を見るのは初めてではあるが、なんとも恐ろしい顔をしている。外見で人を判断してはいけないが、明らかに悪人といった感じだ。
だが、私はそんな二人に怯んではいなかった。私の傍に、もっと怖い人達がいたからだ。
「屑共が……」
ブライト殿下は、その表情を歪めて二人のことを見ていた。
彼は、怒りが表に出やすいタイプであるらしい。拳を握り締めて、今にも二人の悪漢に食ってかかりそうな雰囲気だ。
「……」
一方で、マグナード様は冷ややかな表情をしていた。
ブライト殿下のように激昂してはいないが、それでも彼が怒っていることは伝わってくる。
そんな風に思っていると、私の目の前に風が吹いた。それを感じた瞬間、私はマグナード様の姿が消えていることに気付いた。
「あいつ……おい、待て! マグナード!」
私とほぼ同時に気付いたブライト殿下も、駆け出す。二人の行き先は、当然ヴォルダン伯爵令息とムドラス伯爵令息だ。
「はっ! ひょろい公爵令息に何ができると――」
「黙れ」
「え? あぐっ……!」
次の瞬間、辺りに鈍い音が響いた。
それがマグナード様の拳が、ヴォルダン伯爵令息の顎を砕いた音だとわかったのは、一人の悪漢が力なく崩れ落ちたのが目に入ってからだった。
「ええ……」
「冴えているじゃないか、イルリア嬢。確かにそこが一番あり得そうだ」
「いえ、そんな……」
私とマグナード様は、ブライト殿下にも声をかけて校舎裏に向かっていた。
廊下を走るのはあまり良くないのだが、今は仕方ない。非常事態故に、校則などは考えないようにしている。
「さてと、それでその校舎裏だが……」
「なっ……!」
「これは……」
校舎裏にやって来た私は、目の前の光景に固まっていた。
そこには、二人の男性と一人の女性がいる。それだけで良い状況ではないことは理解することができるのだが、それにも増してひどい状況だった。
一人の女性は、猿轡をかまされて横たわっている。
彼女は虚ろな目をしている。意識はあるが、私達が来たことは恐らく理解できていないだろう。
そんな状態になったのは、そこにいる二人の男性が彼女に危害を加えたからだ。それは、考えるまでもないことである。
「おい、ムドラス。カモがネギをしょってきたみたいだぜ」
「あれは……イルリアとマグナードか」
「王子のブライトもいやがる。ナルネア様をあんな状態にした奴らだ」
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こうして二人の顔を見るのは初めてではあるが、なんとも恐ろしい顔をしている。外見で人を判断してはいけないが、明らかに悪人といった感じだ。
だが、私はそんな二人に怯んではいなかった。私の傍に、もっと怖い人達がいたからだ。
「屑共が……」
ブライト殿下は、その表情を歪めて二人のことを見ていた。
彼は、怒りが表に出やすいタイプであるらしい。拳を握り締めて、今にも二人の悪漢に食ってかかりそうな雰囲気だ。
「……」
一方で、マグナード様は冷ややかな表情をしていた。
ブライト殿下のように激昂してはいないが、それでも彼が怒っていることは伝わってくる。
そんな風に思っていると、私の目の前に風が吹いた。それを感じた瞬間、私はマグナード様の姿が消えていることに気付いた。
「あいつ……おい、待て! マグナード!」
私とほぼ同時に気付いたブライト殿下も、駆け出す。二人の行き先は、当然ヴォルダン伯爵令息とムドラス伯爵令息だ。
「はっ! ひょろい公爵令息に何ができると――」
「黙れ」
「え? あぐっ……!」
次の瞬間、辺りに鈍い音が響いた。
それがマグナード様の拳が、ヴォルダン伯爵令息の顎を砕いた音だとわかったのは、一人の悪漢が力なく崩れ落ちたのが目に入ってからだった。
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