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42.友達として

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「不謹慎ではありますが、この状況はなんというか楽しいものでもあります」
「楽しいもの?」

 朝、私はミレリア嬢とともに歩いていた。
 向かっている先は、私の教室だ。ミレリア嬢は、朝丁寧にも私の部屋を訪ねて来て、一緒に登校しようと誘ってくれたのである。

「お友達と一緒に登校するなんて、随分と久し振りのことなんです。以前も話した通り、妹が流した噂のせいで、孤立していましたから。唯一の友人といえるマグナード様は、男性でしたし」
「お友達、ですか?」

 ミレリア嬢は、私の言葉に驚いたような顔をしていた。
 そこで私は、彼女に対して失礼なことを言ってしまったに気付いた。よく考えてみれば、伯爵令嬢である彼女に友人なんて言っていいはずがない。
 マグナード様と友人関係になったことによって、私は少し無神経になっているようだ。それについては、気をつけなければならない。はっきりと差というものがあるのだから。

「申し訳ありません。失礼でしたね」
「いいえ、失礼だなんてとんでもありません。ただ、少し驚いていただけです」
「ですが、私の方が地位が下な訳ですし……」
「そんなことはお気になさらないでください。この学園では、皆平等なのですから」

 私の言葉に、ミレリア嬢はゆっくりと首を振った。
 なんというか、少し嬉しそうに見える。もしかして彼女も、友達が少なかったりするのだろうか。

「とにかくそういうことなら、今日から私達はお友達であるとしましょう」
「いいんですか?」
「ええ、もちろんです」

 ミレリア嬢は、笑顔で私の言葉に頷いてくれた。
 本当に友人になれたという事実には、私も笑みを浮かべてしまう。

「さて、ここまでですね?」
「あ、はい。ミレリア嬢、ありがとうございます。とても心強かったです」
「いえ、それについてもお気になさらないでください。私の身内から出た種ですからね」
「それこそ、お気になさらないでください。ミレリア嬢には、何の責任もないのですから」
「ありがとうございます。それでは」

 ミレリア嬢は私に一礼した後、自分の教室の方に向かって行った。
 その背中を見届けた後、私は教室の方を見る。既に、マグナード様は登校してきている。彼の方も無事に登校できたらしい。

「おはようございます、マグナード様」
「ええ、おはようございます、イルリア嬢。無事で何よりです」
「マグナード様も、ご無事で何よりです」

 私はマグナード様と、朝の挨拶を交わした。
 最も危険なのは、恐らく登下校だ。それを乗り越えたため、とりあえず安心できる。
 これからは一度意識を切り替えて、学業に専念するとしよう。そちらも当然、大切なことではある訳だし。
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