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40.協力の要請

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「安請け合いしたものだな」
「……そうでしょうか?」

 ミレリア嬢から話を聞いたマグナード様は、ブライト殿下の元にやって来ていた。
 大まかに話を聞いたブライト殿下は、呆れたような笑みを浮かべている。彼はマグナード様の判断をそこまで指示しているという訳ではなさそうだ。

「僕やイルリア嬢に危害が及ぶ可能性がある以上、その二人に対する対処は必要だと思うのですが……」
「それはそうかもしれないが、だからといってそのミレリア嬢を助ける意味があるのか」
「ブライト殿下、それは紳士的な言動ではありませんね」
「いいように利用されているというだけじゃないのか? まあ、お前がそう判断したなら、止めようとも思わないが」

 ブライト殿下は、ミレリア嬢に対していい印象を持っていないのだろう。
 それは仕方ないことかもしれない。彼女は、偽装してマグナード様に自分の敵対者を排除して欲しいと頼んでいる。それだけ聞けば、あくどいといえるかもしれない。

 ただ、実際に彼女と接したマグナード様の判断の方が、この場では正しいと、ブライト殿下も思っているのだろう。
 彼はそこでため息をついて、少し表情を変えた。

「実際の所、その二人を排除することはそこまで難しいことではないだろうな。俺とお前の権力があれば、そんなことは容易い。ただ問題は、当事者の一人の身内を助けようとしていることだ」
「ええ、その点について相談したくて、訪ねさせてもらったのです」

 ブライト殿下が挙げた問題点は、私も思っていたことだった。
 ミレリア嬢の弟であるムドラス、その人物の存在はやはり気になる所だ。

「アークウィル伯爵家の側で、ムドラスを追い出すという措置はできないのだろうな。ああいや、それができるなら、婚約者であるヴォルダンも含めて、ミレリア嬢が対処しているか」
「はい。ムドラスは、アークウィル伯爵家の男子ですし、婚約の話も苦労してまとまったものです。よって彼女の両親は、その二人を排斥するなんて考えないでしょうね」
「娘の事情よりも、家のことを気にしている訳か。まあ、他家のことに口出しなんてあまりしたくはないが、気に入らないな」

 ブライト殿下は、その表情を歪めていた。
 彼も心の中には優しさと正義感を持っている。故にこの件に関して、憤りを覚えているのだろう。

「仕方ないな。俺もできる限りのことをするしかないか」
「ありがとうございます。ブライト殿下の助力は、非常に助かります」

 ブライト殿下の言葉に、マグナード様は笑顔を浮かべていた。
 結局、ブライト殿下も手を貸してくれそうだ。その表情を見て、私はそんなことを思うのだった。
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