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27.最も怖いのは
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「まあ、あなたにとっては災難だったな。今回の件で矛を収めてくれるといいのだが……」
「それは……どうでしょうかね?」
ブライト殿下は、ナルネア嬢が去って行った方向を見つめていた。
正直な所、彼女からの追及がこれで終わるとは考えにくい。例えブライト殿下に注意された前例があったとしても、それを気にするような人達ではないだろう。
「助けてやりたい所ではあるが、生憎俺もあなたと四六時中一緒にいられる訳ではない」
「いえ、こうして助けていただけただけでありがたい限りです。後は、自分でなんとかします。彼女達の望みはわかっていますし、対処することができない訳でもないですから」
「ほう……」
私の言葉に、ブライト殿下は少し驚いたような顔をしていた。
ただ、ナルネア嬢への対処は、実の所それ程難しい訳でもない。私がマグナード様との距離を取ればいいだけなのだ。
そうしていけば、彼女達だって私にちょっかいを出さなくなるだろう。
「まあ、そういうことなら俺が心配する必要もないか。よく考えてみれば、マグナードもあなたの味方である訳だしな」
「はい?」
「マグナードという男は頼りになる。あいつに任せておけば、特に問題はないだろう」
そこでブライト殿下は、マグナード様に対する評価を述べた。
その評価に、納得できない訳ではない。しかし、急にそれを述べられたため、少し面食らってしまっている。
「しかし、あいつを敵に回すなんて考えたくもないことだ」
「……そうなのですか?」
「ああ、あいつ程怖い者もそういないだろうさ」
「怖い?」
続くブライト殿下の評価に、私は首を傾げることになった。
確かに怒った時にはそれなりに迫力があったが、マグナード様はそこまで怖い人だっただろうか。そのような印象はないのだが。
「ピンときていないようだな?」
「ええ、正直あまり同意できません。マグナード様は、怖い人でしょうか?」
「優しい奴程、怒ると怖いものだ。そういう意味において、マグナードは恐ろしい。一度敵であると認識したら、心を痛めながらも、とことん追い詰めて廃除する。奴はそういう男だ。敵に回したくない筆頭だと俺は思っている」
ブライト殿下は、本当に恐ろしいという顔をしていた。
親族である彼は、当然私以上にマグナード様のことを知っているはずだ。その彼がここまで言うのだから、それは恐らく真実なのだろう。
そう考えると、私はマグナード様と友人で良かったと思えてきた。
そこまで恐ろしい人を敵に回すなんて考えたくもない。元よりそのつもりなんてないが、彼を怒らせるようなことはしない方がいいのだろう。
「さて、俺はこれで失礼する。まあ、あなたも色々と大変だろうが、頑張れ」
「あ、ありがとうございます」
それだけ言って、ブライト殿下は去って行った。
その背中を見ながら、私はこれからのことを考えるのだった。
「それは……どうでしょうかね?」
ブライト殿下は、ナルネア嬢が去って行った方向を見つめていた。
正直な所、彼女からの追及がこれで終わるとは考えにくい。例えブライト殿下に注意された前例があったとしても、それを気にするような人達ではないだろう。
「助けてやりたい所ではあるが、生憎俺もあなたと四六時中一緒にいられる訳ではない」
「いえ、こうして助けていただけただけでありがたい限りです。後は、自分でなんとかします。彼女達の望みはわかっていますし、対処することができない訳でもないですから」
「ほう……」
私の言葉に、ブライト殿下は少し驚いたような顔をしていた。
ただ、ナルネア嬢への対処は、実の所それ程難しい訳でもない。私がマグナード様との距離を取ればいいだけなのだ。
そうしていけば、彼女達だって私にちょっかいを出さなくなるだろう。
「まあ、そういうことなら俺が心配する必要もないか。よく考えてみれば、マグナードもあなたの味方である訳だしな」
「はい?」
「マグナードという男は頼りになる。あいつに任せておけば、特に問題はないだろう」
そこでブライト殿下は、マグナード様に対する評価を述べた。
その評価に、納得できない訳ではない。しかし、急にそれを述べられたため、少し面食らってしまっている。
「しかし、あいつを敵に回すなんて考えたくもないことだ」
「……そうなのですか?」
「ああ、あいつ程怖い者もそういないだろうさ」
「怖い?」
続くブライト殿下の評価に、私は首を傾げることになった。
確かに怒った時にはそれなりに迫力があったが、マグナード様はそこまで怖い人だっただろうか。そのような印象はないのだが。
「ピンときていないようだな?」
「ええ、正直あまり同意できません。マグナード様は、怖い人でしょうか?」
「優しい奴程、怒ると怖いものだ。そういう意味において、マグナードは恐ろしい。一度敵であると認識したら、心を痛めながらも、とことん追い詰めて廃除する。奴はそういう男だ。敵に回したくない筆頭だと俺は思っている」
ブライト殿下は、本当に恐ろしいという顔をしていた。
親族である彼は、当然私以上にマグナード様のことを知っているはずだ。その彼がここまで言うのだから、それは恐らく真実なのだろう。
そう考えると、私はマグナード様と友人で良かったと思えてきた。
そこまで恐ろしい人を敵に回すなんて考えたくもない。元よりそのつもりなんてないが、彼を怒らせるようなことはしない方がいいのだろう。
「さて、俺はこれで失礼する。まあ、あなたも色々と大変だろうが、頑張れ」
「あ、ありがとうございます」
それだけ言って、ブライト殿下は去って行った。
その背中を見ながら、私はこれからのことを考えるのだった。
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