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22.顔を合わせるのは

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 ロダルト様のことに関して、私には少し気になっていることがあった。
 それは私と彼、及びマグナード様が同じクラスだということである。
 つまり、教室で絶望していた彼と顔を合わせる機会が、確実にあるのだ。それはなんというか、少々気が滅入る。

「おや、おはようございます。イムリア嬢」
「おはようございます、マグナード様」
「昨日は、よく休めましたか?」
「ええ、それなりに」

 教室にやって来た私は、まずマグナード様と朝の挨拶を交わした。
 彼と私の席は隣同士である。その席順が、今はとてもありがたい。これでなんとか、ロダルト様と顔を合わせる覚悟ができそうだ。

「……ロダルト子爵令息を探しているのですか?」
「あ、ええ、そうです。彼とどんな顔をして同じ教室で過ごせばいいのか、よくわからなくなっていて……」
「まあ、そうでしょうね。気まずいことは確かです」

 私の言葉に、マグナード様は同意してくれた。
 彼は、とても優しい人である。もしかしたら私以上に、ロダルト様と会うことに億劫になっているかもしれない。

「ただ、こちらも断固とした態度でいるしかないでしょう。こればかりは、仕方ありません。非情になりましょう。僕達は、貴族ですからね」
「そうですね……」

 マグナード様は、苦笑いを浮かべていた。
 自分で言いながらも、気は進んでいないのだろう。
 それでも、既に自体は刃を引き下げられない状況だ。覚悟を決めて、ロダルト様と対面するしかない。

「……それにしても、遅いですね?」
「え?」
「ロダルト子爵令息です。いつもなら彼は既に登校していると思いますが……」
「それはまあ、落ち込んでいるということではありませんか?」
「確かに、その可能性もありますね」

 指摘された通り、ロダルト様は割と早く登校してくる方だ。
 ただ、昨日の出来事があったのだから、落ち込んで登校できていないと考えるべきだろう。
 とはいえ、話している間にもう先生が来る時間になっていた。この時間まで来ないということは、もしかしたら今日はもう登校して来ないのかもしれない。

「もしかしたら、休みということでしょうか?」
「そうかもしれませんね。おや、先生が来ましたね」

 私とマグナード様は、少し安心していた。
 ロダルト様が休みであるというなら、今日は一日穏やかに過ごせそうだ。

「ええ、皆さん、おはようございます。突然ですが、皆さんにお知らせがあります。今までこの教室で一緒に学んできたロダルト・ラプトルト子爵令息が退学しました」

 そこで私とマグナード様は、顔を見合わせることになった。
 どうやら、この教室にロダルト様が現れることは二度となくなったらしい。それはとても、驚くべき事実であった。
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