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18.浮気の疑い

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「君は、このマグナード公爵令息と親密な関係にある。この場に同席させているということが、それを証明している」
「……」

 ロダルト様は、自信満々に私に詰め寄ってきた。
 しかし、その理論はとても浅はかなものである。例えこの場に彼が同席していたとしても、私の浮気を証明することなどできない。

「ロダルト様、私とマグナード様はただのクラスメイトです。そもそも、仮に私と彼が親密な関係であったとしても、問題はないではありませんか。あなたは私との婚約を破棄しているのですから」

 ロダルト様は、自分で私との婚約を破棄している。そんな彼から、私とマグナード様の現状を非難される謂れはない。むしろ、それは私に対して無礼極まりない言葉である。

「ふん、因果関係がわかっていないようだね……」
「なんですって?」
「……以前、少し早く教室に行った時に、仲良く話していたのを見ていた」

 そこでロダルト様は、マグナード様が日直をやっていた日のことを指摘してきた。
 それには、私も少し驚いてしまう。あれを見られていたとは、思ってもいなかったからだ。
 ただ、それが浮気になるという主張には無理があるだろう。教室でクラスメイトと談笑することも、許されないというのだろうか。

「話になりませんね。あの時私は、偶然早起きして学校に行き、日直だったクラスメイトと世間話をしていただけです。それのどこが浮気なのでしょうか?」
「教室とはいえ、二人きりで会っていたのだぞ?」
「誰もが利用する教室で、密会などするはずがないでしょう。早い時間といっても、人が来る可能性なんていくらでもあります」

 私は浮気などしていないが、仮にそんなことをするとしても、教室なんて場所は選ばない。
 ロダルト様の理論は、はっきりと言ってお粗末である。そんな適当な理論で非難されるのは、非常に不愉快だ。

「偶々早朝に会って話をしていた。そういうことだろう」
「それこそ、因果関係が滅茶苦茶ですね。浮気を前提にしないでください。根拠としていた教室での密会でしょう」
「いいや、僕は抗議する。君とマグナード公爵令息の不貞にな! ラプトルト子爵家として正式に抗議してやる」

 ロダルト様は、私に対して少々語気を荒げて言葉を発してきた。
 その言葉に、迫力があるという訳ではない。ただ私は、その言葉に黙ることになった。
 私は、今まで口出ししていなかったマグナード様の方を見ていた。ロダルト様の言葉に、彼は目を細めている。その少々怖い顔に、私は固まってしまった。
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