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12.子爵家の秘密
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「申し訳ありません、マグナード様。頼れるのがあなたしかいなくて……」
「いいえ、構いませんよ。僕も首を突っ込んだ側ですからね」
私は、マグナード様とともにエムリーの元に向かっていた。
エムリーと話す際に必要なのは、第三者の存在であった。今の彼女は、何をするかわからない。そのためにも、抑止力となる人が必要なのだ。
それを私は、マグナード様にお願いするしかなかった。悪評が流れた結果、私が頼れる人は他にいなくなってしまったのだ。
「まあ、抑止力という意味から考えると、僕は適切ですからね。何しろ、公爵令息ですから」
「それは……そうなんですよね。マグナード様の意思には反することですが」
「構いませんよ。現実が理想とは違う以上、仕方ないことですからね」
マグナード様は、苦笑いを浮かべていた。
そんな風に話していた私達は、とある場所の前で足を止める。
そこは学園の敷地内にある教会の前だ。エムリーは話す場所として、ここを選んだのである。
「……エムリー」
「お姉様、ですかっ……」
私達が中に入ると、エムリーがしかめっ面をして待っていた。
彼女は、鋭い視線で私のことを睨みつけている。しかし、隣にいるマグナード様を見たことによって、その視線は少し和らいだ。
「これはどういうことでしょうか?」
「第三者の存在が、必要だと思ったのよ。冷静に話し合うためにもね……」
「冷静に話し合う? そのようなことが、できると思っているのですか!」
エムリーは、床に紙を丸めたものを叩きつけていた。
それがなんなのかは、すぐにわかった。恐らく両親から届いた手紙であるだろう。
「やはりあなたにも、手紙が届いていたようね?」
「ええ、届きましたとも。この忌々しい手紙がっ……」
「あなたにとっては、そうなのかもしれないわね」
ここに来て最初に言葉を発してから、エムリーの様子はおかしい。
いつもの彼女とは違う。かなり動揺しているようだ。
最早彼女には、私に対して怒りを向ける余裕すらないように思える。手紙の内容によって、乱心しているだけといった所か。
「わ、私がお父様とお母様の子供ではないなんて……そんなのは嘘に決まっています!」
「……そのような嘘なんて、つくはずがないでしょう」
「嘘です! 嘘です!」
エムリーの出自には、とある秘密が隠されていたらしい。
どうやら彼女は、お母様の妹夫妻、つまり私にとっては叔母夫妻にあたる人物の娘であるそうなのだ。
私達が物心つく前に亡くなった夫妻の子供を、お父様とお母様が引き取った。それがルヴィード子爵家の隠されていた事情なのである。
「いいえ、構いませんよ。僕も首を突っ込んだ側ですからね」
私は、マグナード様とともにエムリーの元に向かっていた。
エムリーと話す際に必要なのは、第三者の存在であった。今の彼女は、何をするかわからない。そのためにも、抑止力となる人が必要なのだ。
それを私は、マグナード様にお願いするしかなかった。悪評が流れた結果、私が頼れる人は他にいなくなってしまったのだ。
「まあ、抑止力という意味から考えると、僕は適切ですからね。何しろ、公爵令息ですから」
「それは……そうなんですよね。マグナード様の意思には反することですが」
「構いませんよ。現実が理想とは違う以上、仕方ないことですからね」
マグナード様は、苦笑いを浮かべていた。
そんな風に話していた私達は、とある場所の前で足を止める。
そこは学園の敷地内にある教会の前だ。エムリーは話す場所として、ここを選んだのである。
「……エムリー」
「お姉様、ですかっ……」
私達が中に入ると、エムリーがしかめっ面をして待っていた。
彼女は、鋭い視線で私のことを睨みつけている。しかし、隣にいるマグナード様を見たことによって、その視線は少し和らいだ。
「これはどういうことでしょうか?」
「第三者の存在が、必要だと思ったのよ。冷静に話し合うためにもね……」
「冷静に話し合う? そのようなことが、できると思っているのですか!」
エムリーは、床に紙を丸めたものを叩きつけていた。
それがなんなのかは、すぐにわかった。恐らく両親から届いた手紙であるだろう。
「やはりあなたにも、手紙が届いていたようね?」
「ええ、届きましたとも。この忌々しい手紙がっ……」
「あなたにとっては、そうなのかもしれないわね」
ここに来て最初に言葉を発してから、エムリーの様子はおかしい。
いつもの彼女とは違う。かなり動揺しているようだ。
最早彼女には、私に対して怒りを向ける余裕すらないように思える。手紙の内容によって、乱心しているだけといった所か。
「わ、私がお父様とお母様の子供ではないなんて……そんなのは嘘に決まっています!」
「……そのような嘘なんて、つくはずがないでしょう」
「嘘です! 嘘です!」
エムリーの出自には、とある秘密が隠されていたらしい。
どうやら彼女は、お母様の妹夫妻、つまり私にとっては叔母夫妻にあたる人物の娘であるそうなのだ。
私達が物心つく前に亡くなった夫妻の子供を、お父様とお母様が引き取った。それがルヴィード子爵家の隠されていた事情なのである。
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