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10.クラスメイトとして

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「イルリア嬢とは親しくしていた訳ではありませんが、これでも僕達はクラスメイトである訳です。何か悩みがあるなら、打ち明けていただけませんか?」
「……申し訳ありませんが、とても個人的なことですから」

 マグナード様の言葉に、私は冷たい言葉を返すことしかできなかった。
 ルヴィード子爵家の事情に、公爵令息である彼が介入してくるのは困る。それは私にとって、避けなければならないことだ。

「なるほど……恐れていたことが起こってしまったという訳ですか」
「それは……」

 そこでマグナード様は、今朝に指摘したことを持ち出してきた。
 正確には少し違う訳ではあるが、今朝の話が影響していない訳ではない。
 そう考えると、今の私の対応は不適切といえるだろう。助言してもらった彼に対して、何も伝えないのは不義理に思えてきた。

「……そうですね。申し訳ありません。マグナード様には忠告までしてもらったというのに」
「いいえお気になさらず。僕も干渉し過ぎている自覚はありますから」

 私の謝罪に対して、マグナード様は笑顔を返してくれた。
 その反応に、私は安心する。彼を怒らせると、大変なことになりかねないからだ。

「ただ勘違いしないでいただきたいのは、僕はルヴィード子爵家に公爵令息として介入したい訳ではないのです。ただ単に、クラスメイトとして相談に乗りたいというだけです」
「マグナード様……」
「地位に関わらず平等であるというのが、この魔法学園です。まあ、それが守られているかは微妙な所ですが」

 マグナード様は、苦笑いを浮かべていた。
 彼は嘆いているのだろう。平等が成立していない学園の生活を。
 しかしそれは仕方ないことだ。身分や地位といった明確な差がある以上、平等なんて成立する訳がない。

 ただ、マグナード様のように高い地位を持っている人が歩み寄ってくれるというのは、ありがたいことだといえるだろう。
 彼が高慢な人間であったなら、クラスの雰囲気なども、もっと悪くなっていたはずである。

「とにかく僕が言いたいのは、ここにいる限りあなたと僕はクラスメイトでしかないということです。もっとも、クラスメイトに話すことではないのかもしれませんから、その前提の上であなたが話したくないというなら、それでいいのですが」
「……わかりました。そういうことなら、話させてください。私も、誰かに聞いてもらいたいという気持ちはありましたから」

 私は、マグナード様の提案を受け入れることにした。
 一人で抱え込んでいるのがよくないことは、明白だったからだ。とりあえず誰かに聞いてもらって、少しでも心を軽くするとしよう。
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