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1.姉妹の仲は
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魔法学園に入学してから一年間は、特に問題はなかったといえる。
友人もそこそこできたし、学業にも励めた。順風満帆といっても、差し支えない一年間だったと思っている。
しかし、そんな私の日常は一瞬で崩れ去ることになった。魔法学園に、私の妹であるエムリーが入学してきたからだ。
「……お姉様は邪魔なんです」
「邪魔……」
私と妹は、幼少期の頃から仲が良くなかった。
お互いのことを敵であると認識していたのである。
その関係性は、私から始まったものという訳ではない。エムリーから始まったものだ。
「あなたはいつも私の上に立っていた。長女だからという理由だけで!」
「それは……」
ルヴィード子爵家の次女として生まれたエムリーは、長女である私イルフィアのことを疎んでいた。
原則長女である私が子爵家を継ぐ婿を迎える。その状況は、彼女は気に入らないそうだ。
「ルヴィード子爵家をお姉様には渡しません。あれは私のものです」
「……ルヴィード子爵家を私物化しないでちょうだい」
「私物化? 私物でないなら誰のものだというのです」
欲深い妹は、子爵家の権力を欲している。それが理解できるようになったのは、彼女の本性を知ってからしばらくのことだった。
誇り高きルヴィード子爵家を、あの高慢な妹が好きなように扱ったら、大変なことになるのは明白だ。
そう思った私は、自らの立場を揺るがす訳にはいかなかった。ルヴィード子爵家の未来のためにも、私はそれに努めてきたのである。
「まあ、お姉様が大成することはもうありません。あなたが学園でどう噂されているか、知っているでしょう?」
「……」
だが、狡猾なる妹は私よりも上手だったといえるだろう。
彼女はこの魔法学園において、私の悪評を流している。それによって、私の立場を揺るがそうとしているのだ。
気に入らないことではあるが、それは有効な手である。この悪評を覆すことができなければ、お父様やお母様がエムリーをルヴィード子爵家を引き継ぐ者として、定めるかもしれない。
「……確かに、あなたの手腕は見事だったといえるでしょうね。でも、少し遅かったのではないかしら?」
「……なんですって?」
「お父様とお母様から、手紙が来たわ。あなたはまだ読んでいないみたいだけれど、そこにはあなたの婚約が決まったことが記されている。それがどういう意味か、わかるわよね?」
「ま、まさか……」
しかし、タイミングが良くエムリーの婚約が決まった。
その婚約は、彼女の望みを叶える上でとても不利なものである。
なぜなら、ルヴィード子爵家を継ぐ婿は私の婚約者であるロダルト様であるからだ。家同士の関係があるため、そこは曲げられない。つまりエムリーは、自身の婚約が決まる前に私からロダルト様を奪う必要があったのだ。
「お父様もお母様も、相手の家がある以上婚約を曲げることはないわ。あなたがどれだけ策を企てても、もう無駄なのよ」
「そ、そんな……」
エムリーの顔は、絶望に歪んでいた。
これまで抱いてきた望みが打ち砕かれたのだ。それも当然だろう。
ただ彼女に対して、同情する気持ちは湧いてこない。散々な目に合わされた私からしてみれば、いい気味である。
「これ以上の争いに意味はないわ。あなたも諦めて、大人しくしていることね?」
「こ、こんな結末なんて……」
悔しそうに拳を握り締めるエムリーから、私はゆっくりと踵を返す。
これ以上、彼女に付き合う必要はない。エムリーの敗北は決まったのだから、後は放っておくとしよう。
友人もそこそこできたし、学業にも励めた。順風満帆といっても、差し支えない一年間だったと思っている。
しかし、そんな私の日常は一瞬で崩れ去ることになった。魔法学園に、私の妹であるエムリーが入学してきたからだ。
「……お姉様は邪魔なんです」
「邪魔……」
私と妹は、幼少期の頃から仲が良くなかった。
お互いのことを敵であると認識していたのである。
その関係性は、私から始まったものという訳ではない。エムリーから始まったものだ。
「あなたはいつも私の上に立っていた。長女だからという理由だけで!」
「それは……」
ルヴィード子爵家の次女として生まれたエムリーは、長女である私イルフィアのことを疎んでいた。
原則長女である私が子爵家を継ぐ婿を迎える。その状況は、彼女は気に入らないそうだ。
「ルヴィード子爵家をお姉様には渡しません。あれは私のものです」
「……ルヴィード子爵家を私物化しないでちょうだい」
「私物化? 私物でないなら誰のものだというのです」
欲深い妹は、子爵家の権力を欲している。それが理解できるようになったのは、彼女の本性を知ってからしばらくのことだった。
誇り高きルヴィード子爵家を、あの高慢な妹が好きなように扱ったら、大変なことになるのは明白だ。
そう思った私は、自らの立場を揺るがす訳にはいかなかった。ルヴィード子爵家の未来のためにも、私はそれに努めてきたのである。
「まあ、お姉様が大成することはもうありません。あなたが学園でどう噂されているか、知っているでしょう?」
「……」
だが、狡猾なる妹は私よりも上手だったといえるだろう。
彼女はこの魔法学園において、私の悪評を流している。それによって、私の立場を揺るがそうとしているのだ。
気に入らないことではあるが、それは有効な手である。この悪評を覆すことができなければ、お父様やお母様がエムリーをルヴィード子爵家を引き継ぐ者として、定めるかもしれない。
「……確かに、あなたの手腕は見事だったといえるでしょうね。でも、少し遅かったのではないかしら?」
「……なんですって?」
「お父様とお母様から、手紙が来たわ。あなたはまだ読んでいないみたいだけれど、そこにはあなたの婚約が決まったことが記されている。それがどういう意味か、わかるわよね?」
「ま、まさか……」
しかし、タイミングが良くエムリーの婚約が決まった。
その婚約は、彼女の望みを叶える上でとても不利なものである。
なぜなら、ルヴィード子爵家を継ぐ婿は私の婚約者であるロダルト様であるからだ。家同士の関係があるため、そこは曲げられない。つまりエムリーは、自身の婚約が決まる前に私からロダルト様を奪う必要があったのだ。
「お父様もお母様も、相手の家がある以上婚約を曲げることはないわ。あなたがどれだけ策を企てても、もう無駄なのよ」
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ただ彼女に対して、同情する気持ちは湧いてこない。散々な目に合わされた私からしてみれば、いい気味である。
「これ以上の争いに意味はないわ。あなたも諦めて、大人しくしていることね?」
「こ、こんな結末なんて……」
悔しそうに拳を握り締めるエムリーから、私はゆっくりと踵を返す。
これ以上、彼女に付き合う必要はない。エムリーの敗北は決まったのだから、後は放っておくとしよう。
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