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17.楽しい時間

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 オルドア様へ決意表明をしてから私は、アトラに寄り添うことを決めた。
 彼女の母親としての役目を担う。それは私にとっては、簡単なことではない。
 ただ、それは私にしかできないことである。アトラの未来を明るいものにするために、私がやるしかないのだ。

「なんて、最初は力んでいたけど……」
「お母様、どうかされましたか?」
「ああいえ、なんでもないわ」

 私は結構、重大な決断をしたつもりだった。
 しかしながら実際にアトラと接すると、気負っていたものは吹き飛んだ。
 というのも、アトラと過ごすのは普通に楽しいのである。彼女の顔を見ていると、なんだか肩から力が抜けていく。

「なんというか、いい天気だと思ってね」
「それは、そうですね。今日は快晴です」
「こういう日には、外に出たくなるわね。日向ぼっこ日和とでもいうのかしら……」

 アトラとは、仲良くやれていると思っている。それ自体は、いいことだといえるだろ。
 ただ問題があるとしたら、私が母親としての役割が担えているかということだ。
 もしかしたら、私は年の離れた姉くらいにしかなれていないかもしれない。それはなんとかしなければならない点である。

「日向ぼっこですか。なんというか、とても穏やかな言葉ですね?」
「穏やか……そうかしら?」
「はい、そう思います。私はしたことがありませんが……」
「あら……」

 アトラの言葉に、私は少し面食らっていた。
 日向ぼっこをしたことがないというのは、もったいないことであるような気もする。
 天気がいい日に外に出てぼうっとする。それはかなり楽しいことだ。一度体験してみても、いいのではないだろうか。

「それなら今からしましょうか」
「え?」
「今日は特別な用事なんかないでしょう? それならせっかくだし、外に出てみましょう。丁度良さそうな木陰があるのよ」
「あ、えっと……」

 とりあえず私は、アトラを誘ってみることにした。
 そんな誘いに、アトラは少し困惑しているようだ。
 ただ、悪い反応という訳ではなさそうだ。興味持っているのか、体が少し揺れている。

「いいんでしょうか? はしたないような気もしますが」
「そんなことないわ」
「そ、それなら、是非……」
「ええ、そうしましょうか」

 アトラは、すぐに私の提案を受け入れてくれた。やはり、体験してみたいのだろう。
 ただ、はしたないという言葉は気になる所ではある。貴族からすると、日向ぼっこみたいなことはあまりしない方がいいのだろうか。
 しかし、仮にそうだとしても今更提案を取り下げるつもりはない。アトラもわくわくしているし、ここは些細なことからは目をそらすとしよう。
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