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11.彼女を知るために
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「……あなたと話がしたいと思って、ここまで来たのだけれど」
「私と話、ですか?」
アトラに気圧されていた私は、とりあえず用件を話してみることにした。
自分の行動に裏目があるとか、考えるのはもうやめにする。それを考えることは、無駄なことだと思ったからだ。
行動しても行動しなくても、運命かもしれないというなら、行動した方がいい。その方がきっと、後悔しないだろう。
「何も覚えていないお母様が、私と話なんてできるんですか?」
「それはその……あなたのことを知りたいから、話がしたいというか」
「私のこと、ですか?」
アトラに言っていることは、紛れもなく私の本心である。
ゲームの悪役令嬢として彼女のことは知っているが、今の彼女のことは何も知らない。
それでは駄目だろう。これからのためにも、私は彼女を知る必要がある。
「……今更、お母様に自分のことを説明するのは変な話ですね」
「ごめんなさい。でも、私は何も覚えていなくて……」
「……わかりました。それでは、部屋に入ってください」
私の言葉に対して、アトラは戸を開けながら答えてくれた。
許可が得られたので、私は彼女に続いて部屋に入っていく。そこは、私の部屋とそれ程変わらない様相の部屋だ。
部屋の様相だけで全てがわかるという訳ではないが、アトラは大人びているということだろうか。
「……あまり、じろじろと見ないでください」
「ああ、ごめんなさい。つい……」
部屋の様子を窺っていた私に、アトラは頬を少し赤らめながら怒っていた。
確かに、人の部屋をじろじろと見るのは失礼過ぎる。相手が子供だからといって、その辺りは弁えておくべきだっただろう。
「……なんだか、調子が狂ってしまいます。本当に、お母様は別人になられましたね」
「別人……まあ、そうなのかしら、ね?」
「以前のお母様は、なんというかクールな方でした。記憶がなくなっただけで、ここまで変わるものなのですね。不思議です。記憶が、人格を形作っているということなのでしょうか?」
「そうね……」
アトラは、以前の私に対して柔らかい表現を使ってくれていた。
ペトラという人間が、アトラに対して冷たかったことは、オルドア様から聞いている。それを遠回しに言っているということは、アトラも私を気遣ってくれているということだろう。
やはりこの子は、悪い子ではない。人に対して、思いやりを持てる子だ。
そんな子が悪役令嬢になってしまうというのは、どうにも悲しい事実である。なんとかして、それは阻止したい所だ。
「私と話、ですか?」
アトラに気圧されていた私は、とりあえず用件を話してみることにした。
自分の行動に裏目があるとか、考えるのはもうやめにする。それを考えることは、無駄なことだと思ったからだ。
行動しても行動しなくても、運命かもしれないというなら、行動した方がいい。その方がきっと、後悔しないだろう。
「何も覚えていないお母様が、私と話なんてできるんですか?」
「それはその……あなたのことを知りたいから、話がしたいというか」
「私のこと、ですか?」
アトラに言っていることは、紛れもなく私の本心である。
ゲームの悪役令嬢として彼女のことは知っているが、今の彼女のことは何も知らない。
それでは駄目だろう。これからのためにも、私は彼女を知る必要がある。
「……今更、お母様に自分のことを説明するのは変な話ですね」
「ごめんなさい。でも、私は何も覚えていなくて……」
「……わかりました。それでは、部屋に入ってください」
私の言葉に対して、アトラは戸を開けながら答えてくれた。
許可が得られたので、私は彼女に続いて部屋に入っていく。そこは、私の部屋とそれ程変わらない様相の部屋だ。
部屋の様相だけで全てがわかるという訳ではないが、アトラは大人びているということだろうか。
「……あまり、じろじろと見ないでください」
「ああ、ごめんなさい。つい……」
部屋の様子を窺っていた私に、アトラは頬を少し赤らめながら怒っていた。
確かに、人の部屋をじろじろと見るのは失礼過ぎる。相手が子供だからといって、その辺りは弁えておくべきだっただろう。
「……なんだか、調子が狂ってしまいます。本当に、お母様は別人になられましたね」
「別人……まあ、そうなのかしら、ね?」
「以前のお母様は、なんというかクールな方でした。記憶がなくなっただけで、ここまで変わるものなのですね。不思議です。記憶が、人格を形作っているということなのでしょうか?」
「そうね……」
アトラは、以前の私に対して柔らかい表現を使ってくれていた。
ペトラという人間が、アトラに対して冷たかったことは、オルドア様から聞いている。それを遠回しに言っているということは、アトラも私を気遣ってくれているということだろう。
やはりこの子は、悪い子ではない。人に対して、思いやりを持てる子だ。
そんな子が悪役令嬢になってしまうというのは、どうにも悲しい事実である。なんとかして、それは阻止したい所だ。
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