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私は、ウルグスと話していた。
彼は、ゼラーム様のよくわからない調査に参加しようとしていた。
それは、止めなければならないことである。このラルファン家が、おかしなことに関わるべきではないのだ。
「ウルグス、言いにくいけど、そういうことはやめておいた方がいいわよ?」
「え? どうして?」
「……声が大きいわ」
私は、小声でウルグスに語りかけていた。
ゼラーム様に聞こえないように考慮したのだが、この弟はよくわかっていないようだ。
ウルグスは、少し成長したと思っていた。だが、彼にはまだまだ色々な自覚が足りていないようである。
「……浮気されて、それで仕返しをするなんて、あまり心証は良くないでしょう? そうなると、ラルファン家の評判は落ちてしまうのよ」
「え? そんなことはないんじゃないかな?」
「どうして?」
「やられたままでいる方が、心証は良くないかもしれないよ。ここは、動いた方が他の貴族に権威を示せるんじゃないかな?」
「いや、それは……」
ウルグスの考えを聞いて、私は少し驚いていた。
一応、彼にも彼なりの考えがあったようである。それについては、少し申し訳ない。私はこの弟を少し侮っていたようだ。
だが、それでも関わるべきではないと思う。権威を示すということは、悪い印象も与えやすいことだ。どちらかというと、関わらない方が心証がいいのではないだろうか。
「おいおい、あんまり変なことを弟に吹き込まない方がいいぜ」
「別に、私は変なことを吹き込んでいるつもりはないのですが……」
「こういうことには、個人の考えというものがある。その弟の意思を尊重させてやることも必要なんじゃないか?」
「勝手なことを……」
そこで、ゼラーム様が口を挟んできた。
確かに、できることなら弟の意思は尊重してあげたい。だが、それはあくまでも個人の考え方だ。家を考えると、それは正しくないはずである。
「そいつは、姉二人を弄んだ男を許せないのさ。そいつの心の中にあるその気持ちが、あんたは嬉しくないのか?」
「それは……」
「今回は、俺が主体だ。ラルファン家には、あくまで当事者として関わってもらうということにする。それでも駄目か?」
「……」
ゼラーム様の言葉は、少し引かれるものだった。
ラルファン家は、あくまで協力者。そういう風な形にすれば、左程悪評も広がらないのではないだろうか。
なんというか、この弟は止まりそうにない。それなら、そちらの方がいいのではないだろうか。
「もし心配なら、あんた傍で制御してもいいんじゃないか? それなら、安心できるだろう?」
「……仕方ないか」
結局、私は諦めるしかなかった。
こうやって流されてしまうのは、私の悪い所かもしれない。
彼は、ゼラーム様のよくわからない調査に参加しようとしていた。
それは、止めなければならないことである。このラルファン家が、おかしなことに関わるべきではないのだ。
「ウルグス、言いにくいけど、そういうことはやめておいた方がいいわよ?」
「え? どうして?」
「……声が大きいわ」
私は、小声でウルグスに語りかけていた。
ゼラーム様に聞こえないように考慮したのだが、この弟はよくわかっていないようだ。
ウルグスは、少し成長したと思っていた。だが、彼にはまだまだ色々な自覚が足りていないようである。
「……浮気されて、それで仕返しをするなんて、あまり心証は良くないでしょう? そうなると、ラルファン家の評判は落ちてしまうのよ」
「え? そんなことはないんじゃないかな?」
「どうして?」
「やられたままでいる方が、心証は良くないかもしれないよ。ここは、動いた方が他の貴族に権威を示せるんじゃないかな?」
「いや、それは……」
ウルグスの考えを聞いて、私は少し驚いていた。
一応、彼にも彼なりの考えがあったようである。それについては、少し申し訳ない。私はこの弟を少し侮っていたようだ。
だが、それでも関わるべきではないと思う。権威を示すということは、悪い印象も与えやすいことだ。どちらかというと、関わらない方が心証がいいのではないだろうか。
「おいおい、あんまり変なことを弟に吹き込まない方がいいぜ」
「別に、私は変なことを吹き込んでいるつもりはないのですが……」
「こういうことには、個人の考えというものがある。その弟の意思を尊重させてやることも必要なんじゃないか?」
「勝手なことを……」
そこで、ゼラーム様が口を挟んできた。
確かに、できることなら弟の意思は尊重してあげたい。だが、それはあくまでも個人の考え方だ。家を考えると、それは正しくないはずである。
「そいつは、姉二人を弄んだ男を許せないのさ。そいつの心の中にあるその気持ちが、あんたは嬉しくないのか?」
「それは……」
「今回は、俺が主体だ。ラルファン家には、あくまで当事者として関わってもらうということにする。それでも駄目か?」
「……」
ゼラーム様の言葉は、少し引かれるものだった。
ラルファン家は、あくまで協力者。そういう風な形にすれば、左程悪評も広がらないのではないだろうか。
なんというか、この弟は止まりそうにない。それなら、そちらの方がいいのではないだろうか。
「もし心配なら、あんた傍で制御してもいいんじゃないか? それなら、安心できるだろう?」
「……仕方ないか」
結局、私は諦めるしかなかった。
こうやって流されてしまうのは、私の悪い所かもしれない。
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