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 ゼラーム様のよくわからない考えに対して、ウルグスは賞賛の言葉をかけていた。
 そういえば、この弟も中々に正義感が強い。彼がやろうとしていることに同意しても、おかしくない性格なのだ。

「正直、僕もブレギム様に対しては思う所があります。あなたの戦いに協力させてもらいませんか?」
「ほう? 中々、見所があるな。もちろん、協力者は多い方がいい。拒む理由は、特にないな……」

 ウルグスの言葉に、ゼラーム様は口の端を歪めていた。
 なんというか、とても楽しそうである。
 だが、こちらとしては何も楽しくない。この弟は、何故わざわざこのような面倒なことに首を突っ込もうとしているのだろうか。

 だが、注意しにくい空気である。
 ここでウルグスを注意すれば、ゼラーム様まで否定することになってしまう。それは、彼に対して少し失礼である。

「姉さん、姉さんも協力してくれるよね?」
「え?」
「ブレギム様の行いは、姉さんも許せないよね? それなら、僕達で彼の間違いを正そう」
「なっ……」

 ウルグスは、眩しい笑顔をこちらに向けてきた。
 この弟は、本当に真っ直ぐな性格である。その性格が、今はあまり良くない方向に働いているのだ。

 確かに、ブレギム様は最低の人間である。
 しかし、別にそれをわざわざ正す必要はないだろう。そんなことは、彼の周りの人間辺りがやるべきことである。

 そもそも、彼の行いを正すというのもおかしな話である。私達に、そんな権利はあるのだろうか。
 もちろん、傷つけられたことは確かなことだが、それで彼を陥れることが正しいとは思えない。

 何より、私は個人的にそんなよくわからないことはしたくない。
 基本的に、私は堅実に生きたいと思っている。今からやろうとしていることは、明らかにその道から外れることだ。
 無闇に、ブレギム様を叩いて、彼のゼパルド家を敵に回すようなことはする意味がない。ラルファン家の利益も考えて、ここは関わらないという選択をしていればいいのではないだろうか。

「いや、私は別に……」
「うん? 姉さんは乗り気ではないのかな? それなら、まあ仕方ないか。僕とゼラーム様だけでやればいいんだね」
「え? それもちょっと……」

 私の態度に、弟は自分だけで参加することを選ぼうとしていた。
 だが、それは普通にまずい。なぜなら、彼もラルファン家の一員だからだ。
 彼が参加していれば、家として参加しているようなものである。そちらも、止めなければならないことだろう。
 なんというか、私の周りには何故か面倒ごとがよくわかる。私は、ただ堅実に生きたいだけなのに、どうしてこうなるのだろうか。
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