上 下
23 / 24

23.新たな計画

しおりを挟む
「ファルティアが聖女を退くにあたって、僕達は新しい聖女を据えなければなりません。その聖女の役目を、アメリアさんにお願いしたいのです」
「私に、ですか……」

 ブライト様は、私にお願いをしてきた。
 それは、予想していなかった訳ではない。元聖女親衛隊である私に白羽の矢が立つ可能性は、充分にあったのだ。
 しかし、私としては正直困ってしまう。もう王都に戻るつもりはなかったからだ。

「あなた程に優秀な魔法使いは、中々いません。できれば、王国のために力を貸していただきたいのですが……」
「……お言葉ですが」
「む……」

 ブライト様の言葉に対して、それまでずっと黙っていたクラウス様が声をあげた。
 彼は、ゆっくりと私の前に立つ。それはまるで、庇っているかのようだった。

「アメリアはこれまで、あなた達王族に振り回されてきました。そんな彼女に、まだ重荷を背負わせるつもりなのですか?」
「クラウス様……」

 クラウス様は、ブライト様に対して堂々と言葉をかけていた。
 相手はこの国の第二王子である。そんな彼に反抗するのは、かなり勇気がいることだと思うのだが。

「……なるほど、確かにあなたの言うことは一理ありますね。しかし、彼女のように才能がある方を腐らせておくのはいかがなものかと」
「アメリアには、エリプス伯爵家の領地において、魔法使いとしての能力を活かしてもらうつもりでした。それこそ、聖女のように」
「エリプス伯爵の計画ですか。それなら小耳に挟んだことがあります」

 ブライト様は、そこで考えるような仕草を見せた。
 その後、彼は笑みを浮かべる。それは、何かをひらめいたといった感じだ。

「それなら、エリプス伯爵のその計画を利用させていただきましょうか?」
「……なんですって?」
「聖女を各地に用意する。それは中々に有効な手段であると思います。それは、ファルティアが退く理由付けにも上手く使えそうだ。あなた達のその計画に、是非とも乗らしてもらいたい」

 ブライト様は、とても飄々とした態度だった。
 もしかして、彼の狙いは初めからこちらだったのだろうか。そう思ってしまうくらいに、ブライト様の発言は滑らかだった。

「……なるほど、こちらとしてはそれでも構いませんが」
「そうですか。アメリアさん、あなたも彼と気持ちは一緒ですか?」
「あ、はい。そうですね。私もできれば、故郷のために尽力したいと思っています」
「それなら、決まりですね。父上にはこちらから話しておきます。今後のことは、また追って連絡することになると思います」

 ブライト様は、少し残念そうにしながらも笑顔を浮かべていた。
 どうやら、なんとか丸く収まりそうだ。そのことに、私は安心するのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,075pt お気に入り:2,192

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

BL / 連載中 24h.ポイント:2,598pt お気に入り:2,841

婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:667pt お気に入り:4,728

本当に愛しているのは姉じゃなく私でしたっ!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:482pt お気に入り:154

社畜系公爵令嬢は、婚約破棄なんてどうでも良い

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:3,288

妹に邪魔される人生は終わりにします

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:797pt お気に入り:6,851

鬼上司と秘密の同居

BL / 連載中 24h.ポイント:3,167pt お気に入り:635

【完結】婚約破棄で私は自由になる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:234

処理中です...