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16.希望のために
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「父上、そろそろ本題に入られた方がよろしいかと」
「おお、そうだった」
エリプス伯爵が一息ついた所で、クラウス様が指摘をした。
私がここに呼ばれたのは、世間話のためではない。それを私も思い出す。
すると、少し和らいできていた緊張が再度現れた。一体私は、どうして伯爵家に呼ばれたのか。それはとても気になる所だ。
「さて、君にわざわざ来てもらったのは、君の今後に関する話がしたかったからだ」
「私の今後、ですか?」
「ああ、君は優秀な魔法使いであるだろう。それはこの国が証明していることだ。そんな魔法使いを腐らせておくのはもったいない。君のその優秀さを、活かしてもらいたいのだ」
エリプス伯爵は、私の目を真っ直ぐに見てそう言ってきた。
その言葉で、私は理解する。これは、仕事の話なのだということを。
「私に、何かできることがあるのでしょうか?」
「それは一概にはいえないだろうね。ただ、君には私の領地を魔法使いの観点から守ってもらいたいと思っている。いわば、地域限定の聖女になってもらいたいのだ」
「地域限定の聖女、ですか……」
「聖女というものは、いわば象徴だ。その存在によって、領地の者達に希望を与えられる。色々と問題はあるが、聖女ファルティアの存在には影響力がある。私もそれに倣ってみようと思っているのだ」
エリプス伯爵の構想に、私は少し驚いていた。
しかしそれは確かに、良い手なのかもしれない。
私も、ファルティア様によって希望を与えられる人は何度も見てきた。強大な力を持つ聖女は、人々にとって心強いものなのだろう。
「私が人々に希望を与えられるなら、そうしたいと思います……でも、聖女ファルティアというのは、聖女親衛隊が必死に作り上げてきた虚像なのです。私一人で、それと同等のものを作り上げるのは難しいかと」
「ほう、虚像か……ふむ、まあ、その辺りについても問題はないだろう。聖女のようなものを作ろうと思っているだけだからね。本物程の力は必要ない。ある程度の力があればいいのだ。その点君なら問題はないさ」
思わず聖女の実態を口走ってしまった私に、エリプス伯爵は鋭い視線を向けてきた。
このお願いは、それなりに重要なものなのだろう。その視線からは、それが伝わってくる。人々の希望、それが必要だとエリプス伯爵は強く思っているということだろうか。
「もちろん、報酬もそれなりに用意させてもらおう。流石に聖女の親衛隊と同等という訳にはいかないかもしれないが……」
「……わかりました。私で力になれるなら、できる限りのことはやってみます」
私はエリプス伯爵の提案を受け入れることにした。
それによって、誰かの心を救うことができるなら望む所だ。
それに私にとっては、報酬も魅力的である。孤児院のこれからのためにも、この提案は受け入れた方がいいと判断したのだ。
「おお、そうだった」
エリプス伯爵が一息ついた所で、クラウス様が指摘をした。
私がここに呼ばれたのは、世間話のためではない。それを私も思い出す。
すると、少し和らいできていた緊張が再度現れた。一体私は、どうして伯爵家に呼ばれたのか。それはとても気になる所だ。
「さて、君にわざわざ来てもらったのは、君の今後に関する話がしたかったからだ」
「私の今後、ですか?」
「ああ、君は優秀な魔法使いであるだろう。それはこの国が証明していることだ。そんな魔法使いを腐らせておくのはもったいない。君のその優秀さを、活かしてもらいたいのだ」
エリプス伯爵は、私の目を真っ直ぐに見てそう言ってきた。
その言葉で、私は理解する。これは、仕事の話なのだということを。
「私に、何かできることがあるのでしょうか?」
「それは一概にはいえないだろうね。ただ、君には私の領地を魔法使いの観点から守ってもらいたいと思っている。いわば、地域限定の聖女になってもらいたいのだ」
「地域限定の聖女、ですか……」
「聖女というものは、いわば象徴だ。その存在によって、領地の者達に希望を与えられる。色々と問題はあるが、聖女ファルティアの存在には影響力がある。私もそれに倣ってみようと思っているのだ」
エリプス伯爵の構想に、私は少し驚いていた。
しかしそれは確かに、良い手なのかもしれない。
私も、ファルティア様によって希望を与えられる人は何度も見てきた。強大な力を持つ聖女は、人々にとって心強いものなのだろう。
「私が人々に希望を与えられるなら、そうしたいと思います……でも、聖女ファルティアというのは、聖女親衛隊が必死に作り上げてきた虚像なのです。私一人で、それと同等のものを作り上げるのは難しいかと」
「ほう、虚像か……ふむ、まあ、その辺りについても問題はないだろう。聖女のようなものを作ろうと思っているだけだからね。本物程の力は必要ない。ある程度の力があればいいのだ。その点君なら問題はないさ」
思わず聖女の実態を口走ってしまった私に、エリプス伯爵は鋭い視線を向けてきた。
このお願いは、それなりに重要なものなのだろう。その視線からは、それが伝わってくる。人々の希望、それが必要だとエリプス伯爵は強く思っているということだろうか。
「もちろん、報酬もそれなりに用意させてもらおう。流石に聖女の親衛隊と同等という訳にはいかないかもしれないが……」
「……わかりました。私で力になれるなら、できる限りのことはやってみます」
私はエリプス伯爵の提案を受け入れることにした。
それによって、誰かの心を救うことができるなら望む所だ。
それに私にとっては、報酬も魅力的である。孤児院のこれからのためにも、この提案は受け入れた方がいいと判断したのだ。
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