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15.伯爵家からの呼び出し

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 ナーゼルさんと再会してから数日後、私はエリプス伯爵家の屋敷に呼ばれていた。 
 領主の家に呼ばれるなんて、正直一大事である。滅茶苦茶緊張しているし、体はがちがちだ。
 どうしてここに呼ばれたのか、それはわからない。クラウス様からの手紙の内容的に、多分ネガティブなことではないと思うのだが、それでも心配だ。

「……待たせてしまって、すまなかったな。わざわざ来てもらったというのに」
「いいえ、お気になさらないでください。お二人とも忙しい訳ですから」

 色々と心穏やかではない私の元に、クラウス様とエリプス伯爵が現れた。
 こうして並んでいると、二人はよく似ている。まあそれは親子であるのだから、当然といえば当然なのだが。

「アメリアちゃん、会うのは随分と久し振りだね。大きくなったなぁ」
「あ、はい。お久し振りです、エリプス伯爵」
「はは、そうかしこまらなくてもいいさ。知らぬ仲でもないのだからな」

 最近はクラウス様の方が多いが、昔はエリプス伯爵も孤児院に来ていた。故に本人が言っている通り、知らない仲という訳ではない。
 しかし、ある程度年齢を重ねた今、昔と同じように伯爵と接することは不可能だ。やはり身分の差というものを、どうしても意識してしまう。

「しかし、君に魔法の才能があったということは私も把握していたが、まさか聖女の親衛隊に選ばれる程にすごい魔法使いだったとはね。あの時は想像もしていなかったよ」
「えっと……結局、クビになってしまったのですけれど」
「クラウスから話は聞いている。大変だったようだね。忌々しいことだ。傲慢な王女というのは……」

 エリプス伯爵は、クラウス様と同じようにその表情を歪めていた。
 彼もまた、身勝手な貴族に対して怒りを覚えているのだろう。エリプス伯爵家の人達は、そういう人達なのだ。
 彼らはいつも、領地の民達を第一に考えてくれている。それは私達にとって、とてもありがたいことだ。

「私にもう少し力があれば、何か働きかけることができるのだがね。残念ながら、私は非力な一伯爵に過ぎない。力になれなくて、申し訳ない限りだ」
「いえ、伯爵が気に病むようなことではありませんよ」
「いや、君が聖女親衛隊であることは、私にとっても名誉なことだったからね。できれば、守りたかったものなのだが……」

 エリプス伯爵は、やはりお優しい方である。
 そんな彼の領地に生まれられたことは、幸せなことだといえるだろう。伯爵の態度に、私はそんなことを思っていた。
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