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6.久し振りの故郷

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 ナーゼルさんやバルトンさんやその他の同僚は、私にひどく同情してくれていた。
 明日は我が身かもしれない。そういう恐怖もあるのだろう。皆の態度は、少しぎこちなかったような気がする。
 苦楽をともにしてきた彼らと別れるのは、少し寂しい。ただ王都に留まっておくこともできないため、私は故郷に帰って来たのである。

「久し振りの故郷か……手紙を書く間もなく帰ってきたけど」

 私の故郷は、エリプス伯爵家の領地内にあるマグセルトという町だ。それなりの規模の町ではあるが、大都市とは言えない程のこの町で、私は育ったのである。
 久し振りに帰って来たが、町は特に変わっていない。それに少し安心しつつも、私は生まれ育った施設へと向かっていく。

「……アメリア?」
「え?」

 そんな私は、とある人物に話しかけられて少し驚くことになった。
 その人物とは、旧知の仲ではある。しかし、この町で会うとはまったく思っていなかった人物なのだ。

「クラウス様、どうしてこちらに?」
「それはこちらの台詞だ。アメリア、聖女親衛隊の一人である君がどうしてここにいるんだ?」

 そこにいたのは、間違いなくエリプス伯爵家の長男であるクラウス様だった。領主の嫡子が、こんな所にいるなんて驚きである。
 ただ、それはお互い様だったようだ。彼からしても、私が戻って来ているという状況は理解しがたい状況であるらしい。

「里帰りという時期でもないだろう? 何かあったのか?」
「えっと、そうですね。色々とありました……」
「色々と?」
「端的に言ってしまえば、聖女の親衛隊をクビになったということなのですが……」
「……なんだって?」

 私が事情の断片を伝えると、クラウス様は眉をひそめた。
 それは当然のことである。聖女の親衛隊をクビになるなんて、普通ならあり得ないことだ。そうなるとしたら、何か罪を犯したとかミスをしたとか、そういった不祥事を起こした場合である。

「何故、君がクビになんかなるんだ? 理由もなくクビになるはずもないだろう」
「それはそうなのですが……理由はわからないのです。聖女であるファルティア様の機嫌を損ねたとかでしょうか?」
「……言っていることの意味がよくわからない。聖女の機嫌を損ねたら、クビになるのか?」
「信じられないとは思いますが、そうなのです」
「な、何……?」

 私の説明に対して、クラウス様は固まっていた。
 彼からある程度信頼されている自覚はある。故に恐らく、彼は混乱しているのだろう。私のことは信じたいが、発言している内容が信じられないために、思考が追いついていないのだ。
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