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4.突然のクビ
しおりを挟む「……ファ、ファルティア様、それはどういうことでしょうか?」
「どういうこと? 言葉通りですよ。あなたには聖女の親衛隊から去ってもらいます。これはバルトンさんとは関係なく、決定事項です」
「なっ……」
ファルティア様は、表情を歪めながら私の方を見てきた。
その表情からは、私に対する憎しみさえ伝わってくる。その理由が、私にはわからない。
確かに彼女に対して不満は持っていたが、ここまで憎しまれるものだろうか。不満を表に出したことなど、数える程しかなかったはずだが。
「何故、私がクビに?」
「さあ、どうしてでしょうね? まあ、己の行いを顧みればわかることでしょう。とにかく、今日を持ってあなたは親衛隊から外します。この王城にも、二度と足を踏み入れないでください」
私の質問を、ファルティア様ははぐらかしてきた。
その説明から考えて、恐らく私のクビに対する正当なる理由は考えていないのだろう。何か気に入らないことがあって、衝動的にクビを言い渡しているのだ。
立場上多大な権力を持つファルティア様が、子供じみた理由で人事を動かす。それは私達にとって、非常に厄介で恐ろしいことだ。
「聖女ファルティア様……それは一体、どういう了見ですか?」
「あら……」
「正当な理由もなく、人をクビにするなど、許されることはありませんよ」
すっかり呆気に取られていた私は、バルトンさんの声で少しだけ冷静になった。
彼の口調からは、怒りが読み取れる。私に対する理不尽な宣告に、堪忍袋の緒が切れたのだろう。
それは私にとって嬉しいことではある。だが、まずい状況だ。このままでは、バルトンさんまでクビになってしまいかねない。
「バルトンさん、私は大丈夫です」
「……アメリア?」
「クビになるというなら、それで構いません。幸いにも私は、バルトンさんやナーゼルさん程困っているという訳ではありませんからね」
私は、敢えて気丈に振る舞うことにした。
当然のことながら、私も事情があって聖女の親衛隊を続けていたため、クビになるのは正直な所辛い。
だが、少なくともここでの被害は私だけに留めておくべきだ。ファルティア様の決定が揺るぐはずもないし、苦労をともにした人達を巻き込みたくはない。
「……気に入りませんね」
「え?」
「もう少し悔しがったらどうなんですか? ああ、あなたには誇りというものがない、ということでしょうか?」
そんな私の姿に、ファルティア様は明らかに不満そうにしていた。
彼女としては、私が絶望するのが見たかったのだろう。そういうことなら、辛さを見せる訳にはいかない。彼女へのせめてもの抵抗として、平静を保つとしよう。
「ファルティア様、それから皆さんも、今までお世話になりました」
「ちっ……」
私が挨拶をすると、ファルティア様はまた不機嫌さを露わにしていた。
それが見られたことが、私にとっての唯一の成果といえるだろう。
しかし、状況はとても厳しい。これからどうしていくべきか、考えなければならないだろう。
「どういうこと? 言葉通りですよ。あなたには聖女の親衛隊から去ってもらいます。これはバルトンさんとは関係なく、決定事項です」
「なっ……」
ファルティア様は、表情を歪めながら私の方を見てきた。
その表情からは、私に対する憎しみさえ伝わってくる。その理由が、私にはわからない。
確かに彼女に対して不満は持っていたが、ここまで憎しまれるものだろうか。不満を表に出したことなど、数える程しかなかったはずだが。
「何故、私がクビに?」
「さあ、どうしてでしょうね? まあ、己の行いを顧みればわかることでしょう。とにかく、今日を持ってあなたは親衛隊から外します。この王城にも、二度と足を踏み入れないでください」
私の質問を、ファルティア様ははぐらかしてきた。
その説明から考えて、恐らく私のクビに対する正当なる理由は考えていないのだろう。何か気に入らないことがあって、衝動的にクビを言い渡しているのだ。
立場上多大な権力を持つファルティア様が、子供じみた理由で人事を動かす。それは私達にとって、非常に厄介で恐ろしいことだ。
「聖女ファルティア様……それは一体、どういう了見ですか?」
「あら……」
「正当な理由もなく、人をクビにするなど、許されることはありませんよ」
すっかり呆気に取られていた私は、バルトンさんの声で少しだけ冷静になった。
彼の口調からは、怒りが読み取れる。私に対する理不尽な宣告に、堪忍袋の緒が切れたのだろう。
それは私にとって嬉しいことではある。だが、まずい状況だ。このままでは、バルトンさんまでクビになってしまいかねない。
「バルトンさん、私は大丈夫です」
「……アメリア?」
「クビになるというなら、それで構いません。幸いにも私は、バルトンさんやナーゼルさん程困っているという訳ではありませんからね」
私は、敢えて気丈に振る舞うことにした。
当然のことながら、私も事情があって聖女の親衛隊を続けていたため、クビになるのは正直な所辛い。
だが、少なくともここでの被害は私だけに留めておくべきだ。ファルティア様の決定が揺るぐはずもないし、苦労をともにした人達を巻き込みたくはない。
「……気に入りませんね」
「え?」
「もう少し悔しがったらどうなんですか? ああ、あなたには誇りというものがない、ということでしょうか?」
そんな私の姿に、ファルティア様は明らかに不満そうにしていた。
彼女としては、私が絶望するのが見たかったのだろう。そういうことなら、辛さを見せる訳にはいかない。彼女へのせめてもの抵抗として、平静を保つとしよう。
「ファルティア様、それから皆さんも、今までお世話になりました」
「ちっ……」
私が挨拶をすると、ファルティア様はまた不機嫌さを露わにしていた。
それが見られたことが、私にとっての唯一の成果といえるだろう。
しかし、状況はとても厳しい。これからどうしていくべきか、考えなければならないだろう。
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