49 / 50
49.とんでもない問題
しおりを挟む
私とソルーガは、お父様の執務室に来ていた。
何かあった時、私達はこうして呼び出される。今日は、一体どのような用件なのだろうか。
「さて、お前達に来てもらったのは、他でもない。セリネアの婚約の話がしたいのだ」
「予想はしていたが、やはりそうだったか……」
お父様は、私達にゆっくりとそう切り出してきた。
どうやら、ソルーガの予測は当たっていたようだ。
「ソルーガ、実の所、お前に頼みたいことがあるのだ」
「頼みたいこと? なんだ?」
「セリネアのことを頼めないか?」
「何?」
「……え?」
お父様の言葉に、私とソルーガは顔を見合わせた。その言葉が、驚くべきものだったからである。
ソルーガに、私を頼む。話の流れ的に、それがどういうことであるかはわかる。
だが、それをすぐに受け入れることはできない。
「親父、何を言っているんだ?」
「そのままの意味だ。セリネアと結婚してもらいたい」
「な、なんだよ、それ?」
「お前達は、実の姉弟ではない。結婚しても問題はないだろう?」
「いや、それはそうだが……」
私とソルーガが結婚することに問題がある訳ではない。
とはいえ、心情的には穏やかでいることはできなかった。今まで、姉と弟と過ごしてきた私達にとって、それは中々大変なことなのだ。
「ソルーガ、お前はいつも姉貴の次の婚約者はまともな人間を選んでくれと言っていただろう。しかし、人間の内面というものが見えないということを、私は今回の事件で学んだ。その結果思ったのだ。私が最も信頼できる男は誰であるかということを」
「……それが、俺だと?」
「お前なら、セリネアを不幸にすることはない。それに、丁度いいのだ。心情的には、本当の息子だと思っているが、事実としてお前は正当なる血統ではない。そんなお前が、セリネアと結婚すれば、わかりやすい構図になる」
「まあ、そうかもしれないが……」
お父様は、ソルーガに対してすらすらと論を述べた。
それは、確かに納得できるものではある。しかしながら、それを受け入れられるかどうかは、別の問題であるだろう。
「お父様、ソルーガにとって私は姉なのですよ?」
「もちろん、それはわかっている。ただ、セリネア、少なくともお前は嫌がっていないのではないか?」
「え?」
お父様の質問に、私は少し怯んでしまった。
確かに私は、ソルーガが結婚相手ならいいと思ったことはある。
それは、半分冗談のようなものだった。だが、半分くらいは本気だったということに、私は今気づかされたのだ。
「えっと、それは……」
「まあ、とりあえず、二人で話し合ってみてくれ。心情的にどうしても嫌だというなら、私も無理強いはしないさ」
困惑する私に対して、お父様はそうやって話を切り上げた。
こうして、私とソルーガはとんでもない問題に直面することになったのだった。
何かあった時、私達はこうして呼び出される。今日は、一体どのような用件なのだろうか。
「さて、お前達に来てもらったのは、他でもない。セリネアの婚約の話がしたいのだ」
「予想はしていたが、やはりそうだったか……」
お父様は、私達にゆっくりとそう切り出してきた。
どうやら、ソルーガの予測は当たっていたようだ。
「ソルーガ、実の所、お前に頼みたいことがあるのだ」
「頼みたいこと? なんだ?」
「セリネアのことを頼めないか?」
「何?」
「……え?」
お父様の言葉に、私とソルーガは顔を見合わせた。その言葉が、驚くべきものだったからである。
ソルーガに、私を頼む。話の流れ的に、それがどういうことであるかはわかる。
だが、それをすぐに受け入れることはできない。
「親父、何を言っているんだ?」
「そのままの意味だ。セリネアと結婚してもらいたい」
「な、なんだよ、それ?」
「お前達は、実の姉弟ではない。結婚しても問題はないだろう?」
「いや、それはそうだが……」
私とソルーガが結婚することに問題がある訳ではない。
とはいえ、心情的には穏やかでいることはできなかった。今まで、姉と弟と過ごしてきた私達にとって、それは中々大変なことなのだ。
「ソルーガ、お前はいつも姉貴の次の婚約者はまともな人間を選んでくれと言っていただろう。しかし、人間の内面というものが見えないということを、私は今回の事件で学んだ。その結果思ったのだ。私が最も信頼できる男は誰であるかということを」
「……それが、俺だと?」
「お前なら、セリネアを不幸にすることはない。それに、丁度いいのだ。心情的には、本当の息子だと思っているが、事実としてお前は正当なる血統ではない。そんなお前が、セリネアと結婚すれば、わかりやすい構図になる」
「まあ、そうかもしれないが……」
お父様は、ソルーガに対してすらすらと論を述べた。
それは、確かに納得できるものではある。しかしながら、それを受け入れられるかどうかは、別の問題であるだろう。
「お父様、ソルーガにとって私は姉なのですよ?」
「もちろん、それはわかっている。ただ、セリネア、少なくともお前は嫌がっていないのではないか?」
「え?」
お父様の質問に、私は少し怯んでしまった。
確かに私は、ソルーガが結婚相手ならいいと思ったことはある。
それは、半分冗談のようなものだった。だが、半分くらいは本気だったということに、私は今気づかされたのだ。
「えっと、それは……」
「まあ、とりあえず、二人で話し合ってみてくれ。心情的にどうしても嫌だというなら、私も無理強いはしないさ」
困惑する私に対して、お父様はそうやって話を切り上げた。
こうして、私とソルーガはとんでもない問題に直面することになったのだった。
19
お気に入りに追加
1,741
あなたにおすすめの小説
義妹が私に毒を持ったので、飲んだふりをして周りの反応を見て見る事にしました
新野乃花(大舟)
恋愛
義姉であるラナーと義妹であるレベッカは、ラナーの婚約者であるロッドを隔ててぎくしゃくとした関係にあった。というのも、義妹であるレベッカが一方的にラナーの事を敵対視し、関係を悪化させていたのだ。ある日、ラナーの事が気に入らないレベッカは、ラナーに渡すワインの中にちょっとした仕掛けを施した…。その結果、2人を巻き込む関係は思わぬ方向に進んでいくこととなるのだった…。
妹とともに婚約者に出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
フリード伯爵は溺愛する自身の妹スフィアと共謀する形で、婚約者であるセレスの事を追放することを決めた。ただその理由は、セレスが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしセレスは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、セレスを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。
本当に私がいなくなって今どんなお気持ちですか、元旦那様?
新野乃花(大舟)
恋愛
「お前を捨てたところで、お前よりも上の女性と僕はいつでも婚約できる」そう豪語するノークはその自信のままにアルシアとの婚約関係を破棄し、彼女に対する当てつけのように位の高い貴族令嬢との婚約を狙いにかかる。…しかし、その行動はかえってノークの存在価値を大きく落とし、アリシアから鼻で笑われる結末に向かっていくこととなるのだった…。
幼馴染のために婚約者を追放した旦那様。しかしその後大変なことになっているようです
新野乃花(大舟)
恋愛
クライク侯爵は自身の婚約者として、一目ぼれしたエレーナの事を受け入れていた。しかしクライクはその後、自身の幼馴染であるシェリアの事ばかりを偏愛し、エレーナの事を冷遇し始める。そんな日々が繰り返されたのち、ついにクライクはエレーナのことを婚約破棄することを決める。もう戻れないところまで来てしまったクライクは、その後大きな後悔をすることとなるのだった…。
戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
出て行けと言われたのですから本当に出て行ってあげます!
新野乃花(大舟)
恋愛
フルード第一王子はセレナとの婚約関係の中で、彼女の事を激しく束縛していた。それに対してセレナが言葉を返したところ、フルードは「気に入らないなら出て行ってくれて構わない」と口にしてしまう。セレナがそんな大それた行動をとることはないだろうと踏んでフルードはその言葉をかけたわけであったが、その日の夜にセレナは本当に姿を消してしまう…。自分の行いを必死に隠しにかかるフルードであったが、それから間もなくこの一件は国王の耳にまで入ることとなり…。
私がいなくなっても構わないと言ったのは、あなたの方ですよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
ミーナとレイノーは婚約関係にあった。しかし、ミーナよりも他の女性に目移りしてしまったレイノーは、ためらうこともなくミーナの事を婚約破棄の上で追放してしまう。お前などいてもいなくても構わないと別れの言葉を告げたレイノーであったものの、後に全く同じ言葉をミーナから返されることとなることを、彼は知らないままであった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる