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48.帰って来てから

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 私は、クラーレス公爵家の自室にてゆったりと暮らしていた。
 ディルギン氏とともにステイリオ男爵家の事件にあたってから、数日が経った。あれからは、特に何事もなく平穏な毎日を送っている。
 それが少し物足りないように思えてしまうのは、少し毒気にあてられすぎたからだろうか。

「姉貴、失礼してもいいか?」
「ソルーガ? どうかしたの?」
「ああ、少し伝えたいことがあるんだ」

 そんなことを考えている私の元に、ソルーガが訪ねて来た。
 どうやら、私に何か用があるらしい。もしかして、また事件だろうか。

「とりあえず、入って」
「ああ、失礼するぜ」

 部屋に入って来たソルーガは、結構真剣な顔をしていた。
 その顔を見て、私は理解する。またディルギン氏に呼ばれたという訳ではないということを。
 もしそうなら、ソルーガは多少なりとも明るい顔をする。友人に会いに行くと言う時に、少なくともこんな顔はしないだろう。

「それで、どのような用件なのかしら?」
「用件といっても、俺もまだその内容は知らないんだ。実は、親父から呼ばれているんだ。俺達二人がな」
「お父様から? 何の話かしら?」

 ソルーガの話に、私は少し落ち込むことになった。
 お父様からの話というのは、あまり楽しくない話が多い。そのため、そんな反応をしてしまったのだ。
 しかし、私はあることに気づいた。ソルーガが、とても真剣なのだ。彼は、いつもなら私と同じような反応をするはずなのだが。

「ソルーガ、どうかしたの?」
「うん? 何がだ?」
「その……いつになく、真剣な顔だと思って」
「真剣な顔……ああ、まあ、そうかもしれないな」

 私の言葉に、ソルーガはゆっくりと頷いた。
 彼は、少し気まずそうな顔をしている。私に話しにくい理由があるということだろうか。

「親父から、姉貴の婚約の話なんかが出るかもしれないと思ってな」
「私の婚約?」
「ほら、親父は姉貴の次の結婚相手を探しておくと言っていただろう。それを伝えられるんじゃないかと思ったんだ」
「それで、そんなに険しい表情に?」
「当り前だ。今後の婚約者が、まともな奴じゃなかったらと思うと気が気じゃない」

 ソルーガは、私のことを心配してくれているようだった。
 それがわかって、私は思わず笑みを浮かべてしまう。彼の気遣いが、とても嬉しかったからである。

「ありがとう、頼りにしているわ、ソルーガ」
「あ、ああ……」

 私の感謝に、ソルーガは苦笑いした。
 彼は、本当に頼りになる弟である。
 時々思う。もしも、彼が私の結婚相手だったならば、どれ程幸せだっただろうかと。
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