何も知らない愚かな妻だとでも思っていたのですか?

木山楽斗

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38.真面目な執事

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「オルメア、あまりはしゃがないように。ソルーガ様が困っているだろう?」
「あっ……すみません。ソルーガ様……」

 テンションが高かったオルメアは、ウォルリッドの言葉で小さくなった。流石に、自分がはしゃぎすぎたと思ったのだろう。

「いや、別に構わないさ。姉貴も言った通り、今は友人としての場だ。無礼講ということでいい」
「いえ、そういう訳にはいきません。例え無礼講でも、使用人としての礼節は守るべきだと教育を受けていますから」

 ソルーガの言葉があっても、ウォルリッドの態度は頑なだった。
 彼の一族は、代々エントアー公爵に仕えてきたと聞いている。そんな彼らにとって、仕える者への礼節というのはとても大切なものなのだろう。

「ウォルリッドは、真面目だな……」
「ええ、そうね……」

 私とソルーガは、顔を見合わせて笑い合った。
 ウォルリッドの真面目な所は、彼の良い所だ。しかし、この状況でもそんな態度なのが、なんだかおかしかったのである。

「えっと……遺跡探索は、楽しかった?」
「あ、はい。楽しかったです」
「それなら、よかったわ」

 私の質問に、オルメアは少し控えめな笑みで応えてくれた。
 そう言ってもらえるのは、こちらとしても嬉しい。二人に観光を勧めてよかったと思う。

「本当にありがとうございます、セリネア様。おかげで、とてもいい観光ができました」
「あなたが楽しめたのなら、何よりだわ。ウォルリッドも、楽しめたのかしら?」
「あ、はい。もちろん、僕も楽しかったですよ」

 私の言葉に、ウォルリッドも笑顔を見せてくれた。
 オルメアばかりが楽しんでいたのかと思ったが、ウォルリッドもきちんと楽しめていたようだ。
 彼は、妹のことをとても大切にしている。そんな彼にとって、妹が喜んだという事実だけでも嬉しいのかもしれない。

「お二人の方は、どうだったのですか? ディルギン氏の調査は、順調なのでしょうか?」
「ええ、多分、順調なのだと思うわ」
「多分?」
「あいつは、秘密主義者だから、全てを明かしてはくれないんだ。まあ、今わかっていることだけでも、順調といえるとは思うが……」

 ウォルリッドの質問に、私もソルーガも曖昧な答えしか返せなかった。
 ディルギン氏は自らの推測を話した後、何かを企てていることを臭わせた。しかしながら、その内容は聞いていない。彼が教えてくれなかったのだ。
 段々とわかってきたことだが、ディルギン氏は秘密主義者である。私達を驚かせたいのか、見えていることを決して教えてはくれないのだ。
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