何も知らない愚かな妻だとでも思っていたのですか?

木山楽斗

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37.観光の結果

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 私とソルーガは、宿屋に戻って来ていた。
 そして、二人で観光をしていたウォルリッドとオルメアとも合流した。せっかくなので、四人で食事を取ることにしたのだ。

「ほ、本当にいいのですか? 僕達が、一緒に食事なんて……」
「もちろん。今日は、使用人としてではなく、友人として楽しんでちょうだい」
「わ、わかりました……」

 ウォルリッドとオルメアは、緊張しているようだった。
 それは当たり前のことである。仕える対象である私達と一緒に食事をするなんて、平静ではいられないだろう。
 しかし、それも最初の内だけであるはずだ。その内慣れてくれば、二人の緊張も解けるだろう。

「それで、二人は何をしていたの?」
「あ、はい。セリネア様に言われた通り、二人で町を観光していました」

 私の質問に、ウォルリッドがそう答えてくれた。
 なんというか、私の指示に従っただけであるように聞こえてしまい、少し申し訳なくなってくる。
 とはいえ、二人にはディルギン氏の調査に付き合わせたくなかったし、偶には休んで欲しかったし、その指示は間違ってなかったはずだ。

「えっと……どんな所を回ったのか、聞かせてもらっていいかしら?」
「近くの町にある遺跡に行ってきました」
「遺跡?」

 とりあえず内容を聞いてみると、オルメアが笑顔でそう答えてくれた。
 それを見て、私は少し安心する。二人が観光を楽しめていたことが、わかっていからだ。

「遺跡といっても、観光地ですよ。周りは整備されていて、安全な所です」
「ああ、確かこの辺りにはそのような所があったわね」
「そうなんです」

 ウォルリッドと比べて、オルメアのテンションが少し高いような気がした。
 恐らく、その遺跡に行ったのは彼女の発案だったのだろう。

「オルメアは、そういったものに興味があるの?」
「はい。そうなんです。前に本で読んで、少しはまってしまって……」
「そうなのね……」

 オルメアにそんな趣味があるということは、私も知らなかった。
 いつもは大人しい彼女が、こんなにも楽しそうにしているのだから、本当に好きなのだろう。
 なんだか、私は温かい気持ちになってきた。オルメアの様子が、微笑ましいのだ。

「遺跡か……そういえば、ディルギンとそんな所に行ったこともあったな」
「え? そうなのですか?」
「あ、ああ……」

 ソルーガが誰に語りかける訳でもなく呟いた言葉に、オルメアはかなりの勢いで食いついた。
 その勢いに、ソルーガは気圧されている。本当に、いつもの彼女ではないようだ。
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