17 / 50
17.計算された関係
しおりを挟む
「アルトア嬢、随分と楽しそうですね……」
「……あら? 奥様……セリネア様でしたかね?」
私が話しかけても、アルトアは余裕そうな態度を崩さなかった。
今回、私が戦いに来たのはラウグス様だ。しかし、アルトアにも当然非がある。
そんな彼女が楽しそうにしているというのは、どう考えてもおかしいことだ。
「アルトア嬢、あなたは状況を理解しているのですか?」
「それは、どういうことでしょうか?」
「当然のことながら、あなたの秘密も今回の一件で明るみに出るのです。すると、どうなるか……」
「ああ、そういうことですか……」
私の言葉に対して、アルトアは笑う。
それもまた、余裕の笑みだ。ここまで言っても、彼女はその態度を崩さない。
だが、実際の所、彼女はとても厳しい立場にあるはずだ。
彼女がラウグス様と関係を持っていた。その事実が公になれば、他に関係を持っている貴族達から避難されることになるだろう。
「確かに、今回の件が明るみに出てしまえば、私も遊びをやめなければなりませんね」
「……それだけで済むと思っているのですか? あなたが関係を持っていた人達は、あなたのことを許しませんよ」
「ふふ、私はそれだけで済むと思っていますよ。何せ、私が関係を持った人達は皆、既婚や婚約者がいる身ですから……その人達が、私を堂々と非難できると思いますか?」
「それは……」
アルトアの言葉に、私は少し怯むことになった。
確かに、彼女の言う通り、他に関係を持っていた人達はアルトアを堂々と批判できるような人達ではなかったからだ。
立場上、相手にとってもそれは公にできないことである。
その面から批判はし辛いということになるだろう。
さらに、心情的にもそれを批判することは難しいはずだ。
なぜなら、アルトアのやっていることを非難するということは、自らの行いを避難するのと同じだからである。
そんなものを気にしない者もいるかもしれない。ただ、多くの者は、アルトアへの非難を躊躇うはずだ。
「……まさか、そこまで計算して関係を結んでいたというのですか?」
「さて、どうでしょうね……」
アルトアは、私に対してわざとらしく笑ってみせた。
それはつまり、全てが計算の上だったということなのだろう。
彼女の性格については、ソルーガから聞いている。
危険そのものを楽しむ性格。それは、ディルギン氏の推測だ。
しかし、彼女は安全対策も怠ってはいなかったようである。
ディルギン氏が例え話として用いたバンジージャンプというものは、あくまで安全であるという前提の元に行われるものだ。同じように、彼女も本当の危険に飛び込むつもりはなかったということなのだろう。
「……ふっ」
「……え?」
そこで私は、思わず笑ってしまった。
そんな私に、アルトアは困惑している。ここで笑みを浮かべられるとは、流石に彼女も思っていなかったようだ。
「……あら? 奥様……セリネア様でしたかね?」
私が話しかけても、アルトアは余裕そうな態度を崩さなかった。
今回、私が戦いに来たのはラウグス様だ。しかし、アルトアにも当然非がある。
そんな彼女が楽しそうにしているというのは、どう考えてもおかしいことだ。
「アルトア嬢、あなたは状況を理解しているのですか?」
「それは、どういうことでしょうか?」
「当然のことながら、あなたの秘密も今回の一件で明るみに出るのです。すると、どうなるか……」
「ああ、そういうことですか……」
私の言葉に対して、アルトアは笑う。
それもまた、余裕の笑みだ。ここまで言っても、彼女はその態度を崩さない。
だが、実際の所、彼女はとても厳しい立場にあるはずだ。
彼女がラウグス様と関係を持っていた。その事実が公になれば、他に関係を持っている貴族達から避難されることになるだろう。
「確かに、今回の件が明るみに出てしまえば、私も遊びをやめなければなりませんね」
「……それだけで済むと思っているのですか? あなたが関係を持っていた人達は、あなたのことを許しませんよ」
「ふふ、私はそれだけで済むと思っていますよ。何せ、私が関係を持った人達は皆、既婚や婚約者がいる身ですから……その人達が、私を堂々と非難できると思いますか?」
「それは……」
アルトアの言葉に、私は少し怯むことになった。
確かに、彼女の言う通り、他に関係を持っていた人達はアルトアを堂々と批判できるような人達ではなかったからだ。
立場上、相手にとってもそれは公にできないことである。
その面から批判はし辛いということになるだろう。
さらに、心情的にもそれを批判することは難しいはずだ。
なぜなら、アルトアのやっていることを非難するということは、自らの行いを避難するのと同じだからである。
そんなものを気にしない者もいるかもしれない。ただ、多くの者は、アルトアへの非難を躊躇うはずだ。
「……まさか、そこまで計算して関係を結んでいたというのですか?」
「さて、どうでしょうね……」
アルトアは、私に対してわざとらしく笑ってみせた。
それはつまり、全てが計算の上だったということなのだろう。
彼女の性格については、ソルーガから聞いている。
危険そのものを楽しむ性格。それは、ディルギン氏の推測だ。
しかし、彼女は安全対策も怠ってはいなかったようである。
ディルギン氏が例え話として用いたバンジージャンプというものは、あくまで安全であるという前提の元に行われるものだ。同じように、彼女も本当の危険に飛び込むつもりはなかったということなのだろう。
「……ふっ」
「……え?」
そこで私は、思わず笑ってしまった。
そんな私に、アルトアは困惑している。ここで笑みを浮かべられるとは、流石に彼女も思っていなかったようだ。
34
お気に入りに追加
1,742
あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

幼馴染だけを優先するなら、婚約者はもう不要なのですね
新野乃花(大舟)
恋愛
アリシアと婚約関係を結んでいたグレイ男爵は、自身の幼馴染であるミラの事を常に優先していた。ある日、グレイは感情のままにアリシアにこう言ってしまう。「出て行ってくれないか」と。アリシアはそのままグレイの前から姿を消し、婚約関係は破棄されることとなってしまった。グレイとミラはその事を大いに喜んでいたが、アリシアがいなくなったことによる弊害を、二人は後に思い知ることとなり…。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

私がいなくなっても構わないと言ったのは、あなたの方ですよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
ミーナとレイノーは婚約関係にあった。しかし、ミーナよりも他の女性に目移りしてしまったレイノーは、ためらうこともなくミーナの事を婚約破棄の上で追放してしまう。お前などいてもいなくても構わないと別れの言葉を告げたレイノーであったものの、後に全く同じ言葉をミーナから返されることとなることを、彼は知らないままであった…。

幼馴染が好きなら幼馴染だけ愛せば?
新野乃花(大舟)
恋愛
フーレン伯爵はエレナとの婚約関係を結んでいながら、仕事だと言って屋敷をあけ、その度に自身の幼馴染であるレベッカとの関係を深めていた。その関係は次第に熱いものとなっていき、ついにフーレン伯爵はエレナに婚約破棄を告げてしまう。しかしその言葉こそ、伯爵が奈落の底に転落していく最初の第一歩となるのであった。

出て行けと言われたのですから本当に出て行ってあげます!
新野乃花(大舟)
恋愛
フルード第一王子はセレナとの婚約関係の中で、彼女の事を激しく束縛していた。それに対してセレナが言葉を返したところ、フルードは「気に入らないなら出て行ってくれて構わない」と口にしてしまう。セレナがそんな大それた行動をとることはないだろうと踏んでフルードはその言葉をかけたわけであったが、その日の夜にセレナは本当に姿を消してしまう…。自分の行いを必死に隠しにかかるフルードであったが、それから間もなくこの一件は国王の耳にまで入ることとなり…。

いらない婚約者と言われたので、そのまま家出してあげます
新野乃花(大舟)
恋愛
カレンの事を婚約者として迎え入れていた、第一王子ノルド。しかし彼は隣国の王族令嬢であるセレーナに目移りしてしまい、その結果カレンの事を婚約破棄してしまう。これでセレーナとの関係を築けると息巻いていたノルドだったものの、セレーナの兄であるデスペラード王はかねてからカレンの事を気に入っており、婚約破棄をきっかけにしてその感情を怒りで満たしてしまう。その結果、ノルドの周りの空気は一変していくこととなり…。

本当に私がいなくなって今どんなお気持ちですか、元旦那様?
新野乃花(大舟)
恋愛
「お前を捨てたところで、お前よりも上の女性と僕はいつでも婚約できる」そう豪語するノークはその自信のままにアルシアとの婚約関係を破棄し、彼女に対する当てつけのように位の高い貴族令嬢との婚約を狙いにかかる。…しかし、その行動はかえってノークの存在価値を大きく落とし、アリシアから鼻で笑われる結末に向かっていくこととなるのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる