15 / 50
15.乗り込んだ先では
しおりを挟む
私は、ラウグス様の部屋の前まで来ていた。
ここには、彼と浮気相手のアルトアがいる。そこに私は今から、乗り込むのだ。
「ふう……」
流石に私も緊張したので、一度深呼吸をして息を整える。
別に私は悪いことをしているという訳ではない。非があるのはラウグス様の方だ。そう自分に言い聞かせて、私は戸を叩く。
「ラウグス様、失礼します」
「……何?」
私の声に驚いたのか、中のラウグス様は素っ頓狂な声をあげた。
彼からの応答を待つ気は最初からなかったので、私はドアノブに手をかける。
鍵はかかっていなかったらしく、戸はすんなりと開いてくれた。どうやら、こういう所まで彼らは迂闊だったようだ。
「さて……まあ、わかっていたことではありますが」
「くっ……」
ラウグス様とアルトアは、ベッドの上で驚くような表情を浮かべていた。
部屋の中で二人がどのような状況なのかは、事前にわかっていたことである。そのため、私に特に驚きはない。
ただ、少し気になることがあった。
明らかに動揺しているラウグス様に比べて、アルトアは結構落ち着いているのだ。
しかし、それは私にとっては些細なことである。
今回の件において、私が戦うのはラウグス様だ。アルトアのことよりも、彼との話に意識を集中させるべきだろう。
「ラウグス様、これがどういうことか、説明していただけますか?」
「ち、違う……これは」
「まあ、あなたがアルトア嬢と関係を持っていることは、既に知っていたことですから、説明したくないというなら、それでも構いませんが」
「……何?」
私の言葉に、ラウグス様は目を丸くしている。やはり、私が浮気に気づいていることを、彼はまったく知らなかったようだ。
わかっていたことではあるのだが、いざこういう反応をされると少し呆れてしまう。これでばれないと思っていたなんて、なんと愚かなことだろうか。
「それは、どういうことだ?」
「言った通りです。あなたの浮気にはある時から気づいていました。そして、私はその証拠を集めていたのです」
「証拠だと?」
「どうしてそんなことをするか。それは、わかっていますよね? あなたには、きちんと対価を払ってもらいます」
「なっ、それは……」
ラウグス様は、まだ動揺しているようだった。
私の言葉に、思考が追いついていないように見える。
「当然のことながら、あなたが浮気をしていたことは公表されることになるでしょうね。まあ、その後どうなるかは、私も正確には言えませんが……」
「……くっ」
ラウグス様は、短く唸った。
彼は今後、苦労することになるだろう。今までの罪が、彼の未来を曇らせるはずだ。
それは、報いである。身勝手な浮気の罰を、彼は受けなければならないのだ。
ここには、彼と浮気相手のアルトアがいる。そこに私は今から、乗り込むのだ。
「ふう……」
流石に私も緊張したので、一度深呼吸をして息を整える。
別に私は悪いことをしているという訳ではない。非があるのはラウグス様の方だ。そう自分に言い聞かせて、私は戸を叩く。
「ラウグス様、失礼します」
「……何?」
私の声に驚いたのか、中のラウグス様は素っ頓狂な声をあげた。
彼からの応答を待つ気は最初からなかったので、私はドアノブに手をかける。
鍵はかかっていなかったらしく、戸はすんなりと開いてくれた。どうやら、こういう所まで彼らは迂闊だったようだ。
「さて……まあ、わかっていたことではありますが」
「くっ……」
ラウグス様とアルトアは、ベッドの上で驚くような表情を浮かべていた。
部屋の中で二人がどのような状況なのかは、事前にわかっていたことである。そのため、私に特に驚きはない。
ただ、少し気になることがあった。
明らかに動揺しているラウグス様に比べて、アルトアは結構落ち着いているのだ。
しかし、それは私にとっては些細なことである。
今回の件において、私が戦うのはラウグス様だ。アルトアのことよりも、彼との話に意識を集中させるべきだろう。
「ラウグス様、これがどういうことか、説明していただけますか?」
「ち、違う……これは」
「まあ、あなたがアルトア嬢と関係を持っていることは、既に知っていたことですから、説明したくないというなら、それでも構いませんが」
「……何?」
私の言葉に、ラウグス様は目を丸くしている。やはり、私が浮気に気づいていることを、彼はまったく知らなかったようだ。
わかっていたことではあるのだが、いざこういう反応をされると少し呆れてしまう。これでばれないと思っていたなんて、なんと愚かなことだろうか。
「それは、どういうことだ?」
「言った通りです。あなたの浮気にはある時から気づいていました。そして、私はその証拠を集めていたのです」
「証拠だと?」
「どうしてそんなことをするか。それは、わかっていますよね? あなたには、きちんと対価を払ってもらいます」
「なっ、それは……」
ラウグス様は、まだ動揺しているようだった。
私の言葉に、思考が追いついていないように見える。
「当然のことながら、あなたが浮気をしていたことは公表されることになるでしょうね。まあ、その後どうなるかは、私も正確には言えませんが……」
「……くっ」
ラウグス様は、短く唸った。
彼は今後、苦労することになるだろう。今までの罪が、彼の未来を曇らせるはずだ。
それは、報いである。身勝手な浮気の罰を、彼は受けなければならないのだ。
37
お気に入りに追加
1,742
あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

幼馴染だけを優先するなら、婚約者はもう不要なのですね
新野乃花(大舟)
恋愛
アリシアと婚約関係を結んでいたグレイ男爵は、自身の幼馴染であるミラの事を常に優先していた。ある日、グレイは感情のままにアリシアにこう言ってしまう。「出て行ってくれないか」と。アリシアはそのままグレイの前から姿を消し、婚約関係は破棄されることとなってしまった。グレイとミラはその事を大いに喜んでいたが、アリシアがいなくなったことによる弊害を、二人は後に思い知ることとなり…。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。


私がいなくなっても構わないと言ったのは、あなたの方ですよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
ミーナとレイノーは婚約関係にあった。しかし、ミーナよりも他の女性に目移りしてしまったレイノーは、ためらうこともなくミーナの事を婚約破棄の上で追放してしまう。お前などいてもいなくても構わないと別れの言葉を告げたレイノーであったものの、後に全く同じ言葉をミーナから返されることとなることを、彼は知らないままであった…。

幼馴染が好きなら幼馴染だけ愛せば?
新野乃花(大舟)
恋愛
フーレン伯爵はエレナとの婚約関係を結んでいながら、仕事だと言って屋敷をあけ、その度に自身の幼馴染であるレベッカとの関係を深めていた。その関係は次第に熱いものとなっていき、ついにフーレン伯爵はエレナに婚約破棄を告げてしまう。しかしその言葉こそ、伯爵が奈落の底に転落していく最初の第一歩となるのであった。

出て行けと言われたのですから本当に出て行ってあげます!
新野乃花(大舟)
恋愛
フルード第一王子はセレナとの婚約関係の中で、彼女の事を激しく束縛していた。それに対してセレナが言葉を返したところ、フルードは「気に入らないなら出て行ってくれて構わない」と口にしてしまう。セレナがそんな大それた行動をとることはないだろうと踏んでフルードはその言葉をかけたわけであったが、その日の夜にセレナは本当に姿を消してしまう…。自分の行いを必死に隠しにかかるフルードであったが、それから間もなくこの一件は国王の耳にまで入ることとなり…。

いらない婚約者と言われたので、そのまま家出してあげます
新野乃花(大舟)
恋愛
カレンの事を婚約者として迎え入れていた、第一王子ノルド。しかし彼は隣国の王族令嬢であるセレーナに目移りしてしまい、その結果カレンの事を婚約破棄してしまう。これでセレーナとの関係を築けると息巻いていたノルドだったものの、セレーナの兄であるデスペラード王はかねてからカレンの事を気に入っており、婚約破棄をきっかけにしてその感情を怒りで満たしてしまう。その結果、ノルドの周りの空気は一変していくこととなり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる