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12.大胆なのは

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 ディルギン氏の調査によって、浮気の証拠は着々と集まり出した。
 そんな集まった証拠の数々を見ながら、私は少し呆れていた。ラウグス様が、どれだけ大胆であったかということがわかり始めたからだ。

「ラウグス様、かなり頻繁にアルトアと会っていたのね」
「ええ、そのようですね……」

 私の言葉に、オルメアはゆっくりと頷いてくれた。
 彼女も、少し呆れたような顔をしている。それ程に、彼は頻繁にアルトアと会っていたのだ。

「暇さえされば、彼の元に行っているのね。かなり熱があるというか、なんというか……」
「正直言って、これでどうしてばれていないと思っているのか……理解できません」
「そうよね……考えてみれば、彼はこれで私がわかっていないと思っているのよね? なんだか、少し腹が立ってきたわ」

 ラウグス様がどこで何をしているかなどということは、正直どうでもいいことだった。
 だが、彼が私がそのことにまるで気づいていないと思っているというのは、釈然としないことだった。
 それは要するに、私を侮っていたり、馬鹿にしたりしているという訳である。そんな彼の内心を考えると、なんだか腹が立ってくるのだ。

「というか、考えてみれば、この屋敷にアルトアを呼んでいるという事実が、私に対する最大の侮辱よね……」
「それは、その……」
「……でも、それって逆にいえば、相当悪いことをしているということでもあるのかしら……」
「セリネア様……?」

 そこで、私はとあることを思いついた。
 家に浮気相手を呼ぶ。それは、とてつもなくあくどいことである。
 私がディルギン氏に依頼してから、彼はまだそういうことはしていない。だが、一度成功しているため、もう一度実行する可能性は高いだろう。

「その現場を押さえる……それは、いいかもしれないわね」
「あの、セリネア様……?」
「オルメア、彼の部屋に監視魔法をかけられるかしら?」
「監視魔法ですか? はい、かけられると思います」

 私は、ラウグス様を追い詰めるための新たな証拠を集めることにした。
 監視魔法をラウグス様の部屋に仕掛けておくことで、彼がアルトアを屋敷に招いて、実際に浮気する様子を記録するのだ。

 正直いって、証拠はもう充分に集まっている。
 そのため、これは彼をより辱めるためだけの証拠集めになるかもしれない。
 ただ、ここまで思い上がっている彼には、徹底的に罰を与えるべきだろう。

「さてと……後は、色々と手配しておかなければならないわね」
「こちらの方の準備は、大方済ませてあります」
「それなら、後はクラーレス公爵家に話を通すだけかしらね……」
「大丈夫なのですか?」
「ええ、問題ないわ。納得できるだけの理由は用意しているもの。首を縦に振らないなんてことは、ないと思うわ」

 この証拠を集めたら、後はもうラウグス様と全面的に争うだけである。
 こちらの勝利は、まず揺るがない。数々の証拠が、彼を追い詰めることになるだろう。
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