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30.困惑している城内
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私達は、アルフェンド王国の王城まで辿り着いていた。
王城の中は、静けさに満ちている。何が起こったのか、まだわかっていないといった様子だ。
それはそうだろう。新たな王が就任して、その王が他国と侵攻したと思ったら失脚した。そんな風に目まぐるしい変化があれば、混乱してしまうのも無理はない。
「ラオード兄上、グルテス兄上、ただいま帰還しました」
「ルバディオ、ご苦労だったな」
「大義は果たしてくれたようだね。しかし、君が役目を真っ当してくれている間に、こちらは色々と大変なことになってしまったよ」
玉座の間にて、ルバディオ様は二人の兄とそのような会話を交わしていた。
彼らからも、困惑が伝わってくる。まだアズガルト様を止められたという実感が、得られていないのかもしれない。
「ああ、兄上、こちらはクレメリアさんとその祖母のペリーナさん、それからドナテロ王国の王子であるウルギアさんです」
「これはこれは、お三方、お越しいただき、誠にありがとうございます」
「ウルギア王子、この度は誠に申し訳ありませんでした。謝罪して済むことではありませんが……」
「ラオード殿、その話はもちろん必要ではありますが、今はそちらの現状を教えていただけませんか? アルフェンド王国で、何が起こったのですか?」
ウルギア様の質問は、私やお祖母様がしたい質問でもある。
アズガルト様はラナルナ嬢に何が起こったのか、それを知ることは事件を真なる意味で解決するために必要なことだ。
「何が起こっているのかは、我々にも理解することはできません。ただ、厄介だったラナルナ嬢が奇妙な魔法を使えなくなり、兄上もそれと同時に体調を崩し始めたのです」
「体調を崩した、か。どうやら代償を払う時がきたようだね……」
「代償、ですか? ペリーナさん、でしたか? あなたは?」
「その辺りのことは、後で説明してやる。それよりも今は、ラナルナという令嬢の元に案内してもらおうか」
ラルード様とグルテス様は、お祖母様のことを知らない。王族に対して不遜な態度をする彼女を、少し警戒しているようだ。
それについては、ルバディオ様に説明を任せるとしよう。弟である彼の方が話が早い。
「兄上、この方は聖女クレメリアさんのお祖母様です。彼女よりも偉大なる魔法使いですよ。とりあえず今は、彼女の言うことに従ってください」
「なるほど、そうでしたか。それなら、すぐにラナルナ嬢の元へ案内いたしましょう」
私が思っていた通り、二人の王子はすぐに警戒を解いてくれた。
アズガルト様以外の兄弟は、信頼関係があるのだろう。今までのやり取りに、私はそんなことを思うのだった。
王城の中は、静けさに満ちている。何が起こったのか、まだわかっていないといった様子だ。
それはそうだろう。新たな王が就任して、その王が他国と侵攻したと思ったら失脚した。そんな風に目まぐるしい変化があれば、混乱してしまうのも無理はない。
「ラオード兄上、グルテス兄上、ただいま帰還しました」
「ルバディオ、ご苦労だったな」
「大義は果たしてくれたようだね。しかし、君が役目を真っ当してくれている間に、こちらは色々と大変なことになってしまったよ」
玉座の間にて、ルバディオ様は二人の兄とそのような会話を交わしていた。
彼らからも、困惑が伝わってくる。まだアズガルト様を止められたという実感が、得られていないのかもしれない。
「ああ、兄上、こちらはクレメリアさんとその祖母のペリーナさん、それからドナテロ王国の王子であるウルギアさんです」
「これはこれは、お三方、お越しいただき、誠にありがとうございます」
「ウルギア王子、この度は誠に申し訳ありませんでした。謝罪して済むことではありませんが……」
「ラオード殿、その話はもちろん必要ではありますが、今はそちらの現状を教えていただけませんか? アルフェンド王国で、何が起こったのですか?」
ウルギア様の質問は、私やお祖母様がしたい質問でもある。
アズガルト様はラナルナ嬢に何が起こったのか、それを知ることは事件を真なる意味で解決するために必要なことだ。
「何が起こっているのかは、我々にも理解することはできません。ただ、厄介だったラナルナ嬢が奇妙な魔法を使えなくなり、兄上もそれと同時に体調を崩し始めたのです」
「体調を崩した、か。どうやら代償を払う時がきたようだね……」
「代償、ですか? ペリーナさん、でしたか? あなたは?」
「その辺りのことは、後で説明してやる。それよりも今は、ラナルナという令嬢の元に案内してもらおうか」
ラルード様とグルテス様は、お祖母様のことを知らない。王族に対して不遜な態度をする彼女を、少し警戒しているようだ。
それについては、ルバディオ様に説明を任せるとしよう。弟である彼の方が話が早い。
「兄上、この方は聖女クレメリアさんのお祖母様です。彼女よりも偉大なる魔法使いですよ。とりあえず今は、彼女の言うことに従ってください」
「なるほど、そうでしたか。それなら、すぐにラナルナ嬢の元へ案内いたしましょう」
私が思っていた通り、二人の王子はすぐに警戒を解いてくれた。
アズガルト様以外の兄弟は、信頼関係があるのだろう。今までのやり取りに、私はそんなことを思うのだった。
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