堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。

木山楽斗

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24.聖女を求めて

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「ルバディオ様、あなたは私を求めて降伏しにきたのですか?」
「ええ、そういうことになります。あなたがドナテロ王国にいるとは思っていませんでしたが……」
「しかし、私に何を?」
「あなたに頼みたいのは、ラナルナ・マナドア侯爵令嬢のことです」
「ラナルナ侯爵令嬢……」

 ルバディオ様は、ゆっくりとその名前を呟いた。
 彼女のことは、聖女のクビを言い渡された時からずっと気になっていた。
 ラナルナ嬢とは、一体何者なのだろうか。聖女の地位に就いているが、その実力がいか程のものか私はまったく知らない。

「彼女という存在は、非常に厄介なのです。よくわかりませんが、魔法とは異なる怪しげな術を行使しているらしくて……」
「ど、どういうことですか?」
「詳しいことは、本当によくわからないのです。ただ、彼女は他者を操ることができるらしく、その奇妙な術によって、兄上はその地位を強固にしているのです」
「そんな術が……」

 ルバディオ様の言葉に、私は混乱することになった。
 魔法についてはそれなりに詳しいつもりだが、彼が今言ったようなことは聞いたことはない。
 まさか、ラナルナ嬢は本当に特別な力を持つ人なのだろうか。私にはわからなくなっていた。

「……小僧、詳しい話をアタシに聞かせな」
「え? あ、あなたは……」
「アタシのことを知らないか。まあ、このクレメリアの師匠とでも言っておこう。魔法に関して、アタシはこの子よりも優秀だ」
「そ、そうなのですか?」
「ええ、それは間違いありません」

 私は、ルバディオ様の不安そうな質問に対して力強く頷いた。
 魔法の知識も実力も、私はお祖母様に及ばない。それは紛れもない事実である。
 今回についても、お祖母様は何かを知っていそうだ。ここはお祖母様に任せるべきだろう。

「そのラナルナという侯爵令嬢がその術を使う時、何が起こる?」
「えっと、聞いた話によると、寒気がするとかなんとか……」
「寒気か……なるほど、間違いなさそうだね。それは妖術だよ」
「妖術……」

 お祖母様の言葉に、私達は首を傾げることになった。
 妖術というのは、聞いたことがないものである。それは一体、どのようなものなのだろうか。

「それを聞いて、少しだけ安心できたね。先に言っておこう。アズガルトとラナルナの天下は続かない。放っておいても、自滅するだろうさ」
「そ、そうなのですか?」
「ただ、これ以上そいつらを野放しにしておくのは癪だね。ここはアタシが、現実を突きつけてあげようじゃないか」

 お祖母様は、嫌味な笑みを浮かべていた。
 こういう時にはいつも思う。彼女が味方でよかったと。
 これからアルフェンド王国を揺るがす二人は、ひどいしっぺ返しを受けることになるだろう。お祖母様の表情が、それを表している。
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