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21.王子達の対立

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 私達三人の前に立つ男の子は、凛々しい表情をしていた。
 その顔つきには、確かに先代の面影があるような気がする。彼が王子であるというのは、どうやら間違いなさそうだ。

「ご寛大な措置、感謝致します、ウルギア王子」
「いいえ、お気になさらずに……それよりも、あなたは?」
「申し遅れました。僕はアルフェンド王国の第四王子……ああいえ、今は正確に言えば王弟ですが……ルバディオと申します」
「ルバディオ殿、ですか。僕は、ドナテロ王国のウルギアです」

 それぞれの国の王子は、そうやって挨拶を交わした。
 本来であるならば、この二人も平和なやり取りができただろう。二人の所作からは、そのような哀愁が感じられる。
 ただ今の二人は、敵対する国の王子達だ。この場において交わされるのは、あくまで争いに関することなのである。

「さて、あなたはこちらに降伏した訳ですが、アルフェンド王国側で何が起きているのか、あなたの口から聞かせてもらっていいですか?」
「ええ、もちろんです。それらの事情は、あなた方ドナテロ王国側に是非知ってもらいたいことですから……」

 ウルギア様の言葉に、ルバディオ様は目を伏せた。
 彼はまだまだ子供といえる年齢である。そんな彼が、こんな風に思い悩んでいるという事実は少し心苦しい。

「兄上……アルフェンド王国の王であるアズガルトは、乱心しています。ラナルナ・マナドアという侯爵令嬢と協力して、過ぎたる望みを果たそうとしている」
「ドナテロ王国への侵攻は、アズガルト王の独断であると?」
「……そもそも、僕達兄弟は兄上を王になどと認めていません。国王への就任から、彼は横暴でした」

 アズガルト様の王位就任に際して、いざこざがあったということは私も初めて知ることだ。
 考えてみれば、私は訳もわからない内に呼び出されて追い出された。業務も普通に忙しかったし、その辺りのことについては把握できていなかったのだ。

「彼は僕達兄弟の制止も聞かずに、ドナテロ王国への侵攻を強行しました。僕はそれに抗うために前線に近いここまで来たのです。といっても、少々来るのが遅かったようですが……」
「つまり今回のことは、アズガルト王の独断であり、あなた達も困っているということですか?」「はい……恥ずかしながら、そういうことになります。しかしながら、それはつまり僕達の落ち度です。兄上を止めることが、僕達にはできなかった。本当に、申し訳ありません」

 ルバディオ様の言葉に、ウルギア様は険しい顔をしていた。
 恐らく、推し量っているのだろう。ルバディオ様の言葉が、どれだけ真実であるかということを。
 それに関しては、私も考えなければならないだろう。今の情勢で、ルバディオ様のことをすぐに鵜呑みにすることはできそうにない。
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