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17.降り注ぐもの

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「お祖母様、待ってください!」

 私は、関所に真っ直ぐに向かうお祖母様を追いかけていた。
 お祖母様は、隠れる気がまったくないようだ。堂々と正面から関所に向かっている。
 しかしそれは、流石に危険だ。いくらお祖母様が優れた魔法使いでも、待ち構える兵士達も手練れであるのだから。

「クレメリア、あんたはあの関所の周りに結界を張り巡らせな」
「え? 結界、ですか?」
「ああ、あそこ以外に被害は出したくないからね。アタシが魔法を放つまでに終わらせな」
「えっと……」

 お祖母様は、こちらを特に待ってくれなかった。
 どうやら、何かしらの魔法を行使するつもりであるらしい。まだ関所まではそれなりに距離があるはずなのだが、一体何をするつもりなのだろうか。
 そんなことを思いながらも、私は関所の周りに結界を張り始めた。周囲への被害を抑えることは、何よりも大切なことだからだ。

「ああクレメリア、頭上だけは開けておいてくれよ」
「頭上? なんだか注文が多いですね……」
「すぐにわかるさ。上を見な」
「……え?」

 そこで私は、お祖母様が指差している空を見上げた。
 そして思わず固まってしまった。関所の遥か上空に、巨大な岩が現れていたからだ。

「お祖母様、あれは……」
「集中を乱すんじゃないよ。あんたの結界がないと、本当に周囲にまで被害が及んじまう」
「わかっています。でも、あれは一体なんなんですか?」
「隕石さ」
「隕石……」

 上空に現れた岩は、ゆっくりと地上へと降下していく。
 それは恐らく、お祖母様の魔力によって引き寄せられているということなのだろう。
 あんなものが地上に普通に落ちたら、大惨事である。困惑しながらも、私は結界をより強固なものへと変質させていく。

「隕石って、確か宇宙から降り注いでくるもの、でしたよね? そんなものを操る魔法なんて、聞いたことがありませんよ」
「まあ、高度な魔法だからね。ただ、あんたのレベルならこの魔法も使えるだろうさ」
「使う機会が、あまりに少なそうですけれど……」
「そうだろうね。そう思って、アタシも教えていなかった」

 遠目からではあるが、関所で兵士らしき者達が慌てているのが見える。
 空から降り注ぐ岩から、なんとか逃げようとしているのだろう。
 ただ、彼らは逃げられない。私の結界が、それを阻んでいるからだ。

「あっ……」
「ふん……」

 次の瞬間、隕石は関所に降り注いだ。
 巨大なる岩は、いとも簡単にそこにあった建物を崩していく。
 同時に聞こえてきたのは、兵士達の叫び声だった。お祖母様は、一瞬で敵の拠点を潰してしまったのである。
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