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3.家に帰って

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 アルフェンド王国とドナテロ王国に跨るガムテット山の中腹には、小さな家がある。
 その家に暮らしている一人の女性は、一部の人からこの国でも最も優秀な魔法使いであると名高い。その魔法使いペリーナは、私の話を聞いてひどく不機嫌そうにしている。

「どうやら、あのガキはろくでもない大人になったようだね……エルベルトは、能力的にも人格的にも優れていたが、その資質は引き継がなかったという訳か」
「お祖母様は、アズガルト様のこともよく知っているのですか?」
「まあ、アタシも若い頃はこの国に手を貸していたからね。知らないという訳ではないさ」

 お祖母様の経歴を、私はそこまで知っている訳ではない。
 国王様とも知り合いであり、国に手を貸したと本人からも聞いているが、その経歴は結構不明瞭なのである。
 一度調べてみたが、お祖母様の記録は公的に残ってはいなかった。本人に聞いても教えてはくれないし、謎が多いのである。

「しかしながらお祖母様、アズガルト様が連れてきたラナルナ嬢が、私よりも優秀な魔法使いであるという可能性もない訳ではないのではありませんか?」
「ほう?」
「お祖母様だって一部の人にしか知られていない訳ですし、私よりも優秀な魔法使いがいたのかもしれません。それで正論ということにはなりませんが、それでももしもそうであるならば、彼の言っていることを全て否定することはできないと思うんです」

 そこで私は、お祖母様にそのようなことを言ってみた。
 アズガルト様の横暴は、許せないことではある。ただ、もしもラナルナ嬢が私よりも遥かに優秀であるならば、彼の論も少しは納得できなくはない。

「それはあり得ないことだね。この国の中で高名な魔法使いであるならば、誰かが一度はその名前を耳にするはずさ。この山奥で育ったあんたでさえ、王国の者達は知っていただろう。侯爵令嬢ならば、隠れていることなんてできないはずだからね」
「それは、そうですね……」
「それに、このアタシが見逃すなんてことはあり得ない。優秀な魔法使いの魔力なら、アタシが感じ取っている。つまり、その女の方がペテン師という訳さ。どのような手を使ったかはわからないが、それは間違いないね」

 お祖母様は、ラナルナ嬢を高らかに批判した。その声色からは、激しい怒りが伝わってくる。
 恐らくお祖母様は、私のために怒ってくれているのだろう。ぶっきら棒であるが優しい。お祖母様はそういう人なのである。
 そういった人がいてくれるというのは、私にとっては救いだ。お祖母様と話しながら、私はそんなことを思うのだった。
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