上 下
8 / 8

8.玉座の間にて

しおりを挟む
 ラフェイン王国に来てから一日が経って、私は玉座の間にて謁見していた。
 玉座に腰掛ける国王様とは、昨日の時点で既に顔を合わせている。それに猶予を貰えたお陰で、心の整理もできた。そのため、そこまで緊張はしていない。
 それは問題ないのだが、私は先程からずっと玉座の間にある肖像画らしきものが気になっていた。そちらに自然と、視線が向いてしまう。

「アルネリア嬢? どうかしたのか?」
「あ、その、あちらの肖像画が気になってしまって」
「ああ、あれのことか……」

 隣にいたラゼルト殿下は、私の質問に何故か嬉しそうにしていた。
 その理由が、私にはわからない。あの絵画がどういったものか教えてもらえれば、それがわかるのだろうか。
 いやそれ所か、あれは私のこちらの国での扱いさえ解明してくれるかもしれない。なぜならその肖像画に描かれている女性は、私とそっくりなのだから。

「あれはこの国の女神ラルネシア様だ」
「ラルネシア様、ですか?」
「ああ、遥か昔からこの国にはその伝説が言い伝えられている。彼女の加護があってこそのラフェイン王国だ」
「そ、そうなのですね……」

 ラゼルト殿下の言葉に、私は肖像画がこの国で祀られている女神であることを理解した。
 それは別に、おかしな話という訳でもない。カルノード王国にも、そういった伝承は言い伝えられている。国ごとにそういったものが、あって当然だろう。
 しかし問題は、女神の容姿である。私とそっくりというその見た目は、色々と考えざるを得ない。

「まさか、ラゼルト殿下やこちらの国の人々が私を歓迎していたのは……」
「ああ、女神ラルネシア様が関係している。あなたはきっと、彼女の生まれ変わりなのだろう。皮肉なものだ。我々は女神の生まれ変わりを有する国と争っていたというのだからな……」
「それは……」

 女神様とそっくりな私が歓迎されるということは、とても納得できるものであった。
 しかしながら、生まれ変わりと言われても当然実感などはない。もちろん心当たりなどがある訳もないため、困惑してしまう。

「……ラゼルト、お前はそろそろ席を外せ」
「む……」
「アルネリア嬢が心配なのはわかるが、この場は私に任せるのだ」
「……わかりました」

 そこで黙っていた国王様が、ラゼルト殿下に声をかけた。
 本来であれば、これは私と国王様との一対一での謁見であった。ラゼルト殿下はついて来てくれていたが、それは許されないことであったらしい。
 不満そうにしながらも、ラゼルト殿下は国王様の言葉に従う。そのまま玉座の間から去って行き、私は改めて国王様と向き合うことになったのだった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

【完結】魅了が解けたあと。

恋愛
国を魔物から救った英雄。 元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。 その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。 あれから何十年___。 仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、 とうとう聖女が病で倒れてしまう。 そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。 彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。 それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・ ※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。 ______________________ 少し回りくどいかも。 でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

「おまえを愛することはない。名目上の妻、使用人として仕えろ」と言われましたが、あなたは誰ですか!?

kieiku
恋愛
いったい何が起こっているのでしょうか。式の当日、現れた男にめちゃくちゃなことを言われました。わたくし、この男と結婚するのですか……?

もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。  親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...