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65.私の気持ち

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「ナルギス、あなたに聞いてもらいたいことがあるの」

 エルバラス侯爵家の屋敷に戻ってきた私は、ナルギスにそのように切り出した。
 色々なことがあったため、随分と遅れてしまったが、私は彼にきちんと言っておかなければならないことがある。それを言う決意を、私は固めたのだ。

「聞いてもらいたいこと? なんだ?」
「……色々と言ってしまうと、結局言えなくなってしまいそうだから結論から言わせてもらうわ。私は、あなたのことを愛しているわ」
「……何?」

 私の言葉に、ナルギスは目を見開いていた。
 驚いているのだろう。それは当然だ。私がいきなりそんなことを言うなんて、彼からしてみれば予想外であるだろう。
 しかし、これが私の今の素直な気持ちだ。何度も助けてくれたナルギスのことを、私は好いている。

「ラフェリア嬢……それは本当なのか?」
「本当よ。嘘なんてつくはずがないでしょう?」
「俺に気を遣ってくれているとかではないのか? 助けたことに恩を感じているとかなら、その必要はないぞ?」
「そういう訳ではないわ。私は本当に、あなたのことを心から愛しているの」

 ナルギスは、私が恩義からそういうことを言っていると考えてしまったようだ。
 確かに彼からすれば、そう思うのも無理はないかもしれない。彼はずっと私に尽くしてくれていた。それに私が愛という報酬を与えるという可能性もある。
 ただ、私はそんな失礼なことはしていない。心からそう思っているからこそ、ナルギスに想いを告げたのだ。

「……それもそうだな。ラフェリア嬢は、冗談でこういうことを言う人ではない。すまない。あなたのことを侮ってしまった」
「いいえ、謝る必要なんてないわ。私は、随分と長い間あなたを待たせていたもの」
「それこそ無用な気遣いというものだ。しかしそうだな。ラフェリア嬢がそう思ってくれているなら、俺も我慢するのはやめるとしよう」
「……え?」

 ナルギスは、私のことをそっと引き寄せてきた。
 少し驚いたが、私はそれを受け入れる。彼のことを拒絶する理由などないからだ。

「俺はこれからも、あなたのことを守っていく。今ここで、そう誓っておこう」
「ありがとう、ナルギス……私も、あなたのことを守り抜いてみせるわ」
「なるほど、それなら俺達は対等だ」
「ええ、私とあなたは対等よ。これからも二人で歩んでいきましょう」

 そこで私とナルギスは、ゆっくりと口づけを交わした。
 これからも私達は、お互いを支え合って生きていけるだろう。対等な立場で、私達は新たなるエルバラス侯爵家を作り上げていくのだ。
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