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62.傾く情勢

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「あなたは自分が疑われていながらも、調査を続けていた。そして、真実に辿り着いた。そうですね?」
「ご存知でしたか?」
「ええ、それについては、あなたの傍にいるお二人、ラフェリア嬢とナルギス殿から伺いました。そちらのお二人は、あなたの心強い味方であるようですね」
「はい、お二人がいなければ、私はきっと真実に辿り着けなかったでしょう」

 エバリス様の言葉に、イムティア様ははきはきと返答していた。
 当然打ち合わせなどはしていないはずだが、話を合わせているらしい。エバリス様の意図が完全に読めている訳ではないが、とりあえず彼と協調するつもりであるようだ。

「ラフェリア嬢、ナルギス殿、あなた方二人は王女に尽くしている。それは、何故ですか?」
「……理由は単純です。イムティア様が王に相応しい人物であると思っているからです」

 エバリス様からの質問に答えたのは、私ではなくナルギスだった。彼の方が、私よりも反応が早かったのだ。
 その反応の早さはありがたい。心からそう思っているというと周りに示せるからだ。

「私もナルギス様と考えは同じです。以前メイドとして仕えていた頃から、王に相応しいのはイムティア様だと思っていました」
「なるほど、王女イムティア、どうやらあなたには人を惹きつける何かがあるようだ」

 エバリス様は、何故か的確に私達の味方をしてくれていた。
 私達を使って、イムティア様を持ち上げてくれている。その意図はよくわからないが、この状況はとてもありがたい。このまま話が進んでいけば、情勢がイムティア様に傾いてくれる可能性がある。

「さて、あなたは今回の事件に関する証拠を握っている、という認識でよろしいのでしょうか?」「ええ、今はまだ調査中ですが、すぐにわかると思います」
「なるほど……」

 イムティア様の返答に、エバリス様は何かを考えるような仕草をした。
 しかし、それは恐らく振りだ。彼がここで息を詰まらせるとは考えにくい。これはパフォーマンスであるのだろう。

「この事件を解決し、若き貴族に慕われている。彼女には王たる資質が備わっているとは思いませんか? ウォンバルト公爵、あなたはどう思われていますか?」
「む……確かに、イムティアにはその資質があるのかもしれない。しかしながら、女王など認められん。前例がないことだ」
「慣例にとらわれることがいいことという訳ではありません。時代は移り変わっている。我々も新しい時代に移り変わらなければなりません。皆様、どうか今一度考えていただきたい」

 エバリス様は、そう言ってこの場を締めくくった。
 周りの有力者達は、悩んでいるような表情をしている。恐らく悩んでいるのだろう。イムティア様を女王に据えるべきであるかどうかを。
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