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54.笑う王女

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 私とナルギスは、事件に関する推理が当たっているのかどうかを確かめるために、イムティア様の元を訪ねていた。
 彼女が本当のことを話してくれるかはわからない。ただ、この推理を抱えたまま今まで通りイムティア様と接するのは難しそうなので、本人にぶつけてみることにしたのだ。

「つまり、お二人は今回の首謀者が私だと考えているということですか?」
「ええ、そう思っています」
「ふふ、お二人は想像力が豊ですね……と、お返ししたい所ですが」

 私達の話を聞き終わったイムティア様は、そう言って笑顔を浮かべていた。
 その笑みは、少しだけ意地悪なような気がする。それはつまり、そういうことなのだろう。

「結論から言いましょうか。お二人の推理は概ね正解です。今回の件は、私が首謀者です」
「……」
「お二人を騙してしまったことについては、申し訳なく思っています。しかしながら、こちらとしても予想外だったのです。あなた方が訪ねて来るなんて、思っていませんでしたからね」

 イムティア様は、申し訳なそうに眉をひそめていた。
 確かに私達は、今回突然訪問した。諸々の処理が終わり、イムティア様のことが気になっての突発的な訪問だ。その時点で、彼女の方は計画を捻じ曲げられなかったのだろう。

「敵を騙すにはまず味方からということで、お二人には本当のことは伏せておくことにしました。本当にすみませんでした」
「いえ、お気になさらないでください。理由があってのことなら、仕方ありません」
「ラフェリア嬢……怒っていますか?」
「いいえ、怒っていませんよ」

 イムティア様の質問に対して、私はゆっくりと首を振った。
 しかし内心、少し怒っている。それが言葉に、少し現れているかもしれない。
 もちろん、仕方ないことであることはわかっているが、それでも完全に受け入れられる訳ではなかった。私の心は、少しばかり狭いのかもしれない。

「一体、誰までが協力者だったのだ? 国王と王子アラヴェド、それにウォンバルト公爵は?」
「お父様と叔父様は、私の協力者です。お父様は被害者役として、叔父様は私と敵対する役として、それぞれお願いしました」
「えっと、それならアラヴェド様は?」
「お兄様に関しては、私にとって予想外だったことです。本来であるならば、お兄様には犯人になっていただきたかったのですけれど……」
「犯人……」

 イムティア様の言葉に、私とナルギスは顔を見合わせた。
 私達が考えても辿り着けなかった犯人役、それがあのアラヴェド様だったのだ。
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