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53.事件の首謀者は
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「ナルギス、私はあなたが言っていることが理解できないわ。今回の件が暗殺でないというなら、一体なんだというの?」
「これは俺の予測にしか過ぎないが……今回の件は恐らく狂言だ」
「きょ、狂言……?」
ナルギスの予測に対して、私は固まってしまった。
先程から彼の言葉には困惑させられてばかりだ。それくらい、私の中にあった前提が覆されていっている。
「それはつまり、国王様やアラヴェド様が自ら毒を飲んだということ? 何のためにそんなことを?」
「考えられるのは、王女イムティアを王にするためだろう」
「イムティア様を王に?」
「彼女が、王国を揺るがす事件を解決する。それによって、箔をつけようとしているのではないだろうか」
「……それじゃあ、イムティア様も一連の事件のグルだと?」
「いや、俺は首謀者は彼女であると考えている」
「なっ……」
ナルギスは、非常に冷静に自らの推論を語ってくれた。
それは、驚くべきものである。ただ私は、その推論にある程度納得していた。思い返してみれば、確かに思い当たる節はある。
しかし、その推論に穴がない訳ではない。私はそれを反論として、出すべきだろう。
「でも、アラヴェド様がイムティア様に協力するとは思えないわ。百歩譲って協力するにしても、自分に危険が及ぶことは避けるでしょうね」
「ふむ……それなら、国王の方だけが協力して、王子アラヴェドは巻き込まれたと考えるべきか。国王が自らとアラヴェドに毒を盛ったと考えれば、色々と納得できる」
ナルギスが言っていることが本当であるならば、今回の事件の難解だった毒を仕込んだ方法と犯人は確かに解決する。
国王様であれば、自分と息子に毒を盛ることは可能だ。最も容易に毒を仕込める人だといえるだろう。
「でも待って、ナルギス。仮にイムティア様が首謀者で、今回の事件で自分の地位を確保しようとしているとしても、そのためには犯人役がいるでしょう? それを捕まえて、やっとイムティア様は英雄になれる。その犯人役は、一体誰なの? その人はほぼ確実に……死刑になるのよ?」
「王女イムティアが、多少の犠牲も厭わない者であるならば、忠実な僕を一人犯人にすればいいだけだ」
「彼女は、そんな人ではないわ。目的のために、誰かを処刑台に送るなんて……」
「ラフェリア嬢、あなたは王女イムティアの善性を信じすぎているのではないか」
「それは……」
ナルギスに指摘されて、私は自らの考えを少し改めることになった。
私は確かに、イムティア様のことを清く見過ぎていたのかもしれない。
彼女だって、目的のために手段を選ばないこともあるだろう。イムティア様だってただの少女ではなく、王族の一人であるのだから。
「これは俺の予測にしか過ぎないが……今回の件は恐らく狂言だ」
「きょ、狂言……?」
ナルギスの予測に対して、私は固まってしまった。
先程から彼の言葉には困惑させられてばかりだ。それくらい、私の中にあった前提が覆されていっている。
「それはつまり、国王様やアラヴェド様が自ら毒を飲んだということ? 何のためにそんなことを?」
「考えられるのは、王女イムティアを王にするためだろう」
「イムティア様を王に?」
「彼女が、王国を揺るがす事件を解決する。それによって、箔をつけようとしているのではないだろうか」
「……それじゃあ、イムティア様も一連の事件のグルだと?」
「いや、俺は首謀者は彼女であると考えている」
「なっ……」
ナルギスは、非常に冷静に自らの推論を語ってくれた。
それは、驚くべきものである。ただ私は、その推論にある程度納得していた。思い返してみれば、確かに思い当たる節はある。
しかし、その推論に穴がない訳ではない。私はそれを反論として、出すべきだろう。
「でも、アラヴェド様がイムティア様に協力するとは思えないわ。百歩譲って協力するにしても、自分に危険が及ぶことは避けるでしょうね」
「ふむ……それなら、国王の方だけが協力して、王子アラヴェドは巻き込まれたと考えるべきか。国王が自らとアラヴェドに毒を盛ったと考えれば、色々と納得できる」
ナルギスが言っていることが本当であるならば、今回の事件の難解だった毒を仕込んだ方法と犯人は確かに解決する。
国王様であれば、自分と息子に毒を盛ることは可能だ。最も容易に毒を仕込める人だといえるだろう。
「でも待って、ナルギス。仮にイムティア様が首謀者で、今回の事件で自分の地位を確保しようとしているとしても、そのためには犯人役がいるでしょう? それを捕まえて、やっとイムティア様は英雄になれる。その犯人役は、一体誰なの? その人はほぼ確実に……死刑になるのよ?」
「王女イムティアが、多少の犠牲も厭わない者であるならば、忠実な僕を一人犯人にすればいいだけだ」
「彼女は、そんな人ではないわ。目的のために、誰かを処刑台に送るなんて……」
「ラフェリア嬢、あなたは王女イムティアの善性を信じすぎているのではないか」
「それは……」
ナルギスに指摘されて、私は自らの考えを少し改めることになった。
私は確かに、イムティア様のことを清く見過ぎていたのかもしれない。
彼女だって、目的のために手段を選ばないこともあるだろう。イムティア様だってただの少女ではなく、王族の一人であるのだから。
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