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52.助かった王子

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「ナルギス、いい知らせよ」
「ラフェリア嬢? どうかしたのか?」

 私とナルギスは、寝泊まりした客室に戻って来ていた。
 イムティア様が考えたいことがあるため一人にして欲しいと言ってきたため、私達は私達なりにこれからのことを考えていたのである。
 そんな私は、知り合いのメイドさんからとある報告を受けた。アラヴェド様の容体が、安定したらしいのだ。

「アラヴェド様も、もう大丈夫らしいわ。少なくとも、命に別状はないって……」
「助かったのか?」
「ええ、そうよ」
「なんだと……」

 私の報告に、ナルギスは驚愕していた。
 それは明らかに、アラヴェド様の安定を喜んでいるといった感じではない。むしろ回復しないことを願っていたかのようだ。
 確かに彼は、私に対してひどいことをした人ではあるが、いくらなんでもその反応はひどいのではないだろうか。命が助かったことは、絶対にいいことである。

「……何故、助かるのだ。国王も、王子アラヴェドも」
「ナルギス、あなた何を言っているの?」
「ラフェリア嬢、俺は今回の事件がずっと腑に落ちていなかった。考えてみれば、国王が助かった時点で気付くべきだったのだ」

 ナルギスの言葉に怒ろうとした私は、彼の様子にそれが誤りであると理解した。
 彼はアラヴェド様が助かったという情報から、事件に関する何かを悟ったようだ。それを私は、聞かせてもらうべきだろう。

「ナルギス、一体どういうことなの?」
「ラフェリア嬢、毒を用いた暗殺をする場合、どのような毒を使う?」
「どのような毒と言われても……毒には詳しくないわ」
「大まかではあるが、俺なら強力な毒を使う。確実に仕留められるように、だ。体外に入った時点で助からない毒など山ほどある。国王の暗殺をするなら、絶対にそれを手に入れるだろう」

 ナルギスは、拳を握り締めて力説していた。
 確かに、言われてみればそれはそうかもしれない。今回のような暗殺は、確実に成功させたいと思うだろう。強力な毒を用意するのは当然だ。

「それが今回の毒はなんだ。早期に発見された国王はともかく、発見が遅れたアラヴェドも葬りされないとは! まるで最初から仕留める気がないかのようだ」
「仕留める気がないって……」
「実際に仕留める気などなかったのだろう。今回の件は恐らく、暗殺などではない」
「な、なんですって?」

 ナルギスの言葉に、私は困惑することになった。
 正直、訳がわからない。暗殺でないというのなら、一体何が起こったというのだろうか。
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