49 / 66
49.良くない状況
しおりを挟む
「とりあえず、お父様が安定したということは喜ぶべき事実ではあります。お兄様の方も、助かってくれるといいのですが……」
「ええ、そうですね」
部屋を訪ねた私達を、イムティア様はすぐに受け入れてくれた。
彼女の顔は、昨日に比べると少し明るい。一晩休んだことや、国王様の容体が安定したことで少し気分が晴れたのだろう。
とはいえ、状況は未だに芳しくない。アラヴェド様はまだ危機的状況であるし、事件のことは何一つとしてわかっていないのである。
「王女イムティア、今回の事件に関して考えていましたが、まずは毒を仕込んだ犯人ではなく、何に毒が仕込まれていたかを考えるべきではないでしょうか?」
「何に毒が仕込まれていたか、ですか……それは確かに、重要なことですね」
「そこから犯人……実行犯が見つかるかもしれません」
「なるほど、それならまずはそれを考えましょうか」
ナルギスからの提案に、イムティア様はゆっくりと頷いた。
私としても、その提案には同意である。二人がどこから毒の被害を受けたのか、それはとても重要なことだ。
「まず仮定しておきますが、今回の事件は王族を狙ったものであるはずです」
「ええ、そうでしょうね。私が被害を受けていないのは、何かしらの幸運があったと考えるべきだと思います」
「それなら、あなた方三人が共通して口にするものや触るものに毒を仕込んだ可能性が高い。何か心当たりはありませんか?」
「私達三人、ですか……」
イムティア様は、ナルギスからの質問に頭を抱えていた。恐らく覚えがないのだろう。
しかし、それは当然だ。相手もそんなにわかりやすい所に毒を仕込んだりはしない。ばれないにこしたことはないからだ。
「……ナルギス、二人とイムティア様には異なっている点があるわ」
「む?」
「当然のことではあるけれど、二人は男性でイムティア様は女性よ。その辺りの差が、関係している可能性はあるのではないかしら」
「なるほど、それは確かに考慮するべき点ではあるか」
そこで私は、思いついたことを言ってみた。
性別の違いが重要かどうかはわからない。ただ、その部分の差によってイムティア様が助かった可能性はない訳ではない。
「……もしくは、私のことを最初から狙っていなかったのかもしれません」
「イムティア様、それはどういうことですか?」
「状況を整理して思ったんです。もしかしたらこの事件の犯人は、私のことを犯人に仕立て上げようとしているのではないかと……そうしようとする人物に、私は心当たりがあります」
「……まさか」
イムティア様からの言葉に、私はゆっくりと息を呑んだ。
確かにその可能性はない訳ではない。あまりにも残酷なことではあるが、この状況で彼女が疑わないとは言い切れない。
やはり状況は良くなさそうだ。何か大きな手がかりでも見つかればいいのだが。
「ええ、そうですね」
部屋を訪ねた私達を、イムティア様はすぐに受け入れてくれた。
彼女の顔は、昨日に比べると少し明るい。一晩休んだことや、国王様の容体が安定したことで少し気分が晴れたのだろう。
とはいえ、状況は未だに芳しくない。アラヴェド様はまだ危機的状況であるし、事件のことは何一つとしてわかっていないのである。
「王女イムティア、今回の事件に関して考えていましたが、まずは毒を仕込んだ犯人ではなく、何に毒が仕込まれていたかを考えるべきではないでしょうか?」
「何に毒が仕込まれていたか、ですか……それは確かに、重要なことですね」
「そこから犯人……実行犯が見つかるかもしれません」
「なるほど、それならまずはそれを考えましょうか」
ナルギスからの提案に、イムティア様はゆっくりと頷いた。
私としても、その提案には同意である。二人がどこから毒の被害を受けたのか、それはとても重要なことだ。
「まず仮定しておきますが、今回の事件は王族を狙ったものであるはずです」
「ええ、そうでしょうね。私が被害を受けていないのは、何かしらの幸運があったと考えるべきだと思います」
「それなら、あなた方三人が共通して口にするものや触るものに毒を仕込んだ可能性が高い。何か心当たりはありませんか?」
「私達三人、ですか……」
イムティア様は、ナルギスからの質問に頭を抱えていた。恐らく覚えがないのだろう。
しかし、それは当然だ。相手もそんなにわかりやすい所に毒を仕込んだりはしない。ばれないにこしたことはないからだ。
「……ナルギス、二人とイムティア様には異なっている点があるわ」
「む?」
「当然のことではあるけれど、二人は男性でイムティア様は女性よ。その辺りの差が、関係している可能性はあるのではないかしら」
「なるほど、それは確かに考慮するべき点ではあるか」
そこで私は、思いついたことを言ってみた。
性別の違いが重要かどうかはわからない。ただ、その部分の差によってイムティア様が助かった可能性はない訳ではない。
「……もしくは、私のことを最初から狙っていなかったのかもしれません」
「イムティア様、それはどういうことですか?」
「状況を整理して思ったんです。もしかしたらこの事件の犯人は、私のことを犯人に仕立て上げようとしているのではないかと……そうしようとする人物に、私は心当たりがあります」
「……まさか」
イムティア様からの言葉に、私はゆっくりと息を呑んだ。
確かにその可能性はない訳ではない。あまりにも残酷なことではあるが、この状況で彼女が疑わないとは言い切れない。
やはり状況は良くなさそうだ。何か大きな手がかりでも見つかればいいのだが。
13
お気に入りに追加
2,041
あなたにおすすめの小説
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?
風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。
そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。
ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。
それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。
わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。
伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。
そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。
え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか?
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
令嬢は大公に溺愛され過ぎている。
ユウ
恋愛
婚約者を妹に奪われた伯爵家令嬢のアレーシャ。
我儘で世間知らずの義妹は何もかも姉から奪い婚約者までも奪ってしまった。
侯爵家は見目麗しく華やかな妹を望み捨てられてしまう。
そんな中宮廷では英雄と謳われた大公殿下のお妃選びが囁かれる。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから
甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。
であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。
だが、
「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」
婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。
そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。
気がつけば、セリアは全てを失っていた。
今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。
さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。
失意のどん底に陥ることになる。
ただ、そんな時だった。
セリアの目の前に、かつての親友が現れた。
大国シュリナの雄。
ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。
彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる