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48.朝目覚めて
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あれだけのことがあったため、中々眠ることはできなかった。
しかしなんとか眠った私は、ゆっくりと目を覚ました。多少の眠たさはあるが、しかしそれでも体は軽やかだ。やはり休息は、大事だったといえるだろう。
「……起きたか」
「ああ、ナルギス、おはよう」
「おはよう。眠ることはできたか?」
「ええ、なんとかね」
私が体を起こすと、ベッドの横の椅子に座っていたナルギスが朝の挨拶をしてきた。
どうやら、彼は先に目覚めていたようである。その事実を寝ぼけた頭で認識して、私は一つの結論に至った。
「……ナルギス、あなたいつからそこにいたの?」
「一時間程前からだろうか」
「その間、私の寝顔を見ていたの?」
「まあ、そういうことになるか」
ナルギスは、私の質問に淡々と回答してきた。
一時間程、寝顔を見られていた。その事実には、色々と思う所がある。
ただ、ナルギスの顔はとても真剣だった。故に彼が、ただ私の寝顔を見るために座っていた訳ではないことが理解できる。
「……昨日のことでも、考えていたのかしら?」
「そうともいえるが、考えていたのはどちらかというと今日のことだ。これからどうするか、その方針をずっと考えていた」
「あなたの方は眠れたのかしら? まさか、ずっと今日のことを考えていた訳ではないでしょうね?」「いや、昨日はすぐに眠った。早く目が覚めたのもそのためだ」
「……言われてみれば、私が眠る前に寝息が聞こえてきていたわね」
私が色々と考えている時、ナルギスは既に眠りについていた。
どうやら彼は、そういったことを割り切ることができる性質であるらしい。
休む時は休む、考える時は考える。そういう風に切り替えられるのは、強靭な精神力があるからなのだろう。
「でも、今日のことを考える前に毒に蝕まれている二人のことが心配だわ」
「それに関しては、既に確認している。国王様の容態は安定しているらしい。恐らく、命に別状はないとのことだ」
「そうなのね……国王様は? それじゃあ、アラヴェド様はどうなっているの?」
「王子アラヴェドは、依然油断ができない状態であるそうだ。見つかるのが遅かった分、そちらの方が状況は深刻だ」
「なるほど……」
ナルギスの手の早さに驚きながらも、私は少し考えることになった。
国王様の容態が安定しているというのはいい知らせだ。きっとこれで、イムティア様も少しは元気になってくれるだろう。
一方で、アラヴェド様の方は悪い知らせだ。彼にいい印象はないが、命まで奪われていいとは思わない。なんとか助かって欲しいものである。その気持ちはきっと、イムティア様も同じだろう。
「とにかく、行動は早くするべきよね。そのために、昨日は休んだ訳だし……」
「ああ、とりあえず王女イムティアの元に向かおうか」
「ええ、そうしましょう」
ナルギスの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして私達は、行動を開始するのだった。
しかしなんとか眠った私は、ゆっくりと目を覚ました。多少の眠たさはあるが、しかしそれでも体は軽やかだ。やはり休息は、大事だったといえるだろう。
「……起きたか」
「ああ、ナルギス、おはよう」
「おはよう。眠ることはできたか?」
「ええ、なんとかね」
私が体を起こすと、ベッドの横の椅子に座っていたナルギスが朝の挨拶をしてきた。
どうやら、彼は先に目覚めていたようである。その事実を寝ぼけた頭で認識して、私は一つの結論に至った。
「……ナルギス、あなたいつからそこにいたの?」
「一時間程前からだろうか」
「その間、私の寝顔を見ていたの?」
「まあ、そういうことになるか」
ナルギスは、私の質問に淡々と回答してきた。
一時間程、寝顔を見られていた。その事実には、色々と思う所がある。
ただ、ナルギスの顔はとても真剣だった。故に彼が、ただ私の寝顔を見るために座っていた訳ではないことが理解できる。
「……昨日のことでも、考えていたのかしら?」
「そうともいえるが、考えていたのはどちらかというと今日のことだ。これからどうするか、その方針をずっと考えていた」
「あなたの方は眠れたのかしら? まさか、ずっと今日のことを考えていた訳ではないでしょうね?」「いや、昨日はすぐに眠った。早く目が覚めたのもそのためだ」
「……言われてみれば、私が眠る前に寝息が聞こえてきていたわね」
私が色々と考えている時、ナルギスは既に眠りについていた。
どうやら彼は、そういったことを割り切ることができる性質であるらしい。
休む時は休む、考える時は考える。そういう風に切り替えられるのは、強靭な精神力があるからなのだろう。
「でも、今日のことを考える前に毒に蝕まれている二人のことが心配だわ」
「それに関しては、既に確認している。国王様の容態は安定しているらしい。恐らく、命に別状はないとのことだ」
「そうなのね……国王様は? それじゃあ、アラヴェド様はどうなっているの?」
「王子アラヴェドは、依然油断ができない状態であるそうだ。見つかるのが遅かった分、そちらの方が状況は深刻だ」
「なるほど……」
ナルギスの手の早さに驚きながらも、私は少し考えることになった。
国王様の容態が安定しているというのはいい知らせだ。きっとこれで、イムティア様も少しは元気になってくれるだろう。
一方で、アラヴェド様の方は悪い知らせだ。彼にいい印象はないが、命まで奪われていいとは思わない。なんとか助かって欲しいものである。その気持ちはきっと、イムティア様も同じだろう。
「とにかく、行動は早くするべきよね。そのために、昨日は休んだ訳だし……」
「ああ、とりあえず王女イムティアの元に向かおうか」
「ええ、そうしましょう」
ナルギスの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして私達は、行動を開始するのだった。
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