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30.崩れた協力
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アラヴェド様とメレティアに言葉をかけた国王様は、そのまま悲しそうな背中を見せて去っていった。
件のメイドカルトアも国王様に続き去って、集まっていた野次馬達もいなくなり、その場に残っているのは私と渦中の二人だけだ。
「……なんということだ。君のせいで、君が余計なことをしたせいで、僕の王への道は途絶えてしまった! なんてことをしてくれたんだ!」
「な、なんですって!」
そこでアラヴェド様は、メレティアを痛烈に批判した。
別に妹の肩を持つという訳ではないが、彼のその主張はあまりにも身勝手である。
この愚かなる第一王子は、騒ぎを聞きつけてやってきて自滅しただけだ。それらは全て、自業自得である。
「君さえいなければ、僕はこのまま国王になれたというのに……」
「じ、自分の行いの責任を私に求めないでください」
「僕の責任だと? ふざけるな! 元々君が父上の策略にも気付かず愚かにもあのメイドを虐げていただけじゃないか!」
「きゃあっ!」
「あ、危ない……」
アラヴェド様は、激昂しながらメレティアの肩を押した。
それによりよろける妹を、私は反射的に受け止める。流石にこれは、アラヴェド様に怒りを覚えてしまう。妹のことは憎いが、それでも彼の仕打ちは気に食わない。
「……お兄様、相変わらずあなたは紳士の片隅にも置けない人ですね」
「……何?」
そんな私よりも先に、アラヴェド様に声をかける者がいた。
それは、彼の妹であるイムティア様だ。彼女は、ゆっくりとこちらに近寄って来る。そして、私達を庇うようにして、アラヴェド様の前に立つ。
「イムティア……これは、お前の差し金か! 不出来な妹め! 僕の邪魔をすることしか能がないのか!」
「……ええ、そうかもしれませんね。私はずっと、お兄様に王位を渡す訳にはいかないと思っていましたから」
「この能無しがっ……王家の血筋で、男子は僕だけだ! その僕が父に見限られたということがどういうことかわかっているのか! 王家の正当なる血筋が途絶えてしまうのだぞ!」
アラヴェド様は、イムティア様にも激しい怒りをぶつけていた。
しかし誇り高き王女は、まったく怯まない。そこに二人の格の違いがあるような気がした。
「私は、王というものが正当なる血筋であるべきかどうかということには左程興味がありませんが、そういうことならご心配なく、王位は私が手にしますから」
「何? お前が、女王になるとでもいうつもりか!」
「ええ、その通りです」
「馬鹿を言うな。そんな前例がないことが認められる訳ないだろう!」
「認めさせます。なぜなら今の私には自信と自負があるからです。私は、誇りを持ってこの国の王になる!」
「なっ……!」
イムティア様の言葉に、アラヴェド様は後退していく。彼女の気迫に、気圧されたのだろう。
やはり二人の間には、決定的な違いがあるようだ。ゆっくりとイムティア様から逃げていくアラヴェド様に、私はそのようなことを思うのだった。
件のメイドカルトアも国王様に続き去って、集まっていた野次馬達もいなくなり、その場に残っているのは私と渦中の二人だけだ。
「……なんということだ。君のせいで、君が余計なことをしたせいで、僕の王への道は途絶えてしまった! なんてことをしてくれたんだ!」
「な、なんですって!」
そこでアラヴェド様は、メレティアを痛烈に批判した。
別に妹の肩を持つという訳ではないが、彼のその主張はあまりにも身勝手である。
この愚かなる第一王子は、騒ぎを聞きつけてやってきて自滅しただけだ。それらは全て、自業自得である。
「君さえいなければ、僕はこのまま国王になれたというのに……」
「じ、自分の行いの責任を私に求めないでください」
「僕の責任だと? ふざけるな! 元々君が父上の策略にも気付かず愚かにもあのメイドを虐げていただけじゃないか!」
「きゃあっ!」
「あ、危ない……」
アラヴェド様は、激昂しながらメレティアの肩を押した。
それによりよろける妹を、私は反射的に受け止める。流石にこれは、アラヴェド様に怒りを覚えてしまう。妹のことは憎いが、それでも彼の仕打ちは気に食わない。
「……お兄様、相変わらずあなたは紳士の片隅にも置けない人ですね」
「……何?」
そんな私よりも先に、アラヴェド様に声をかける者がいた。
それは、彼の妹であるイムティア様だ。彼女は、ゆっくりとこちらに近寄って来る。そして、私達を庇うようにして、アラヴェド様の前に立つ。
「イムティア……これは、お前の差し金か! 不出来な妹め! 僕の邪魔をすることしか能がないのか!」
「……ええ、そうかもしれませんね。私はずっと、お兄様に王位を渡す訳にはいかないと思っていましたから」
「この能無しがっ……王家の血筋で、男子は僕だけだ! その僕が父に見限られたということがどういうことかわかっているのか! 王家の正当なる血筋が途絶えてしまうのだぞ!」
アラヴェド様は、イムティア様にも激しい怒りをぶつけていた。
しかし誇り高き王女は、まったく怯まない。そこに二人の格の違いがあるような気がした。
「私は、王というものが正当なる血筋であるべきかどうかということには左程興味がありませんが、そういうことならご心配なく、王位は私が手にしますから」
「何? お前が、女王になるとでもいうつもりか!」
「ええ、その通りです」
「馬鹿を言うな。そんな前例がないことが認められる訳ないだろう!」
「認めさせます。なぜなら今の私には自信と自負があるからです。私は、誇りを持ってこの国の王になる!」
「なっ……!」
イムティア様の言葉に、アラヴェド様は後退していく。彼女の気迫に、気圧されたのだろう。
やはり二人の間には、決定的な違いがあるようだ。ゆっくりとイムティア様から逃げていくアラヴェド様に、私はそのようなことを思うのだった。
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