24 / 66
24.騎士団長との対面
しおりを挟む
「なるほど、つまり王女様はご友人のために我々を動かしたいという訳ですか」
「ええ、そういうことになりますね」
「ふむ……」
私達の正面に腰掛けている初老の男性は、ゆっくりとため息をついた。
そのため息が、どういった意味なのかはわからない。ただ先程から、彼の周りの空気が張り詰めているのを私は感じ取っていた。
騎士団長ノルヴァ・バルガナス、厳格な人物であるとは聞いていたが、彼は私の計画に何を思っているのだろうか。
「……騎士団の役割というのは、この国の秩序を守ることです。故に当然、命を奪おうとする者を見逃すつもりはありません。ただ我々の立場から言わせてもらうと、ラフェリア嬢がしようとしていることは、秩序を乱す行為です」
「それは、どういう意味ですか?」
「ラフェリア嬢は、わざわざエルバラス侯爵を煽り、自らを手にかけさせようとしている。そうやって他者を陥れる行為に我々は手を貸せません」
騎士団長の言葉に、私は少し考えることになった。
確かに私がしようとしていることは、いいことではないだろう。それは間違いない。よく考えてみれば、騎士団が協力する道理はないことだ。
だが私には、彼らの協力が必要である。つまり私は、なんとかして騎士団長を説得しなければならないのだ。
「騎士団長、あなたの言っていることは……」
「……騎士団長、お子さんはいらっしゃいますか?」
「む……?」
「ラフェリア嬢?」
私は、言葉を発しようとしたイムティア様を制止して一つの質問をした。
それに対して、騎士団長は少し驚いたような顔をしている。いきなりこんな質問をされると思っていなかったのだろう。
「……息子が二人いますが」
「騎士団長は、息子さんを愛していますか?」
「……もちろんだとも」
「どちらも?」
「どちらも、です」
こちらの質問に、騎士団長はゆっくりとした口調で答えてきた。
彼は迷うことなく答えを口にしている。それはつまり、騎士団長は本当に子供を愛する父親であるということなのだろう。
それなら、こちらにとって好都合である。彼がそういう人物であるということは、充分その情に訴えかけることができるからだ。
「私のお父様……エルバラス侯爵は、私のことを愛していません。私は彼が、反抗する私のことを手にかけると確信しています」
「……」
「親が子供を手にかける。それを騎士団長はどう思われますか? 今回の件は、ある種の賭けです。もしもお父様に一欠けらでも情が残っていたなら、私の作戦は破綻します。あなたはそんな私の計画を、秩序を乱すくだらないものとして切り捨てるのですか?」
「……」
私の言葉に、騎士団長は何も言わなかった。
ただ彼の表情は、確実に変わっていた。その表情からは、苦悩や同情といった気持ちが読み取れる。
恐らく彼は、私に協力してくれるだろう。それを理解した私は、心の中で密かに安堵するのだった。
「ええ、そういうことになりますね」
「ふむ……」
私達の正面に腰掛けている初老の男性は、ゆっくりとため息をついた。
そのため息が、どういった意味なのかはわからない。ただ先程から、彼の周りの空気が張り詰めているのを私は感じ取っていた。
騎士団長ノルヴァ・バルガナス、厳格な人物であるとは聞いていたが、彼は私の計画に何を思っているのだろうか。
「……騎士団の役割というのは、この国の秩序を守ることです。故に当然、命を奪おうとする者を見逃すつもりはありません。ただ我々の立場から言わせてもらうと、ラフェリア嬢がしようとしていることは、秩序を乱す行為です」
「それは、どういう意味ですか?」
「ラフェリア嬢は、わざわざエルバラス侯爵を煽り、自らを手にかけさせようとしている。そうやって他者を陥れる行為に我々は手を貸せません」
騎士団長の言葉に、私は少し考えることになった。
確かに私がしようとしていることは、いいことではないだろう。それは間違いない。よく考えてみれば、騎士団が協力する道理はないことだ。
だが私には、彼らの協力が必要である。つまり私は、なんとかして騎士団長を説得しなければならないのだ。
「騎士団長、あなたの言っていることは……」
「……騎士団長、お子さんはいらっしゃいますか?」
「む……?」
「ラフェリア嬢?」
私は、言葉を発しようとしたイムティア様を制止して一つの質問をした。
それに対して、騎士団長は少し驚いたような顔をしている。いきなりこんな質問をされると思っていなかったのだろう。
「……息子が二人いますが」
「騎士団長は、息子さんを愛していますか?」
「……もちろんだとも」
「どちらも?」
「どちらも、です」
こちらの質問に、騎士団長はゆっくりとした口調で答えてきた。
彼は迷うことなく答えを口にしている。それはつまり、騎士団長は本当に子供を愛する父親であるということなのだろう。
それなら、こちらにとって好都合である。彼がそういう人物であるということは、充分その情に訴えかけることができるからだ。
「私のお父様……エルバラス侯爵は、私のことを愛していません。私は彼が、反抗する私のことを手にかけると確信しています」
「……」
「親が子供を手にかける。それを騎士団長はどう思われますか? 今回の件は、ある種の賭けです。もしもお父様に一欠けらでも情が残っていたなら、私の作戦は破綻します。あなたはそんな私の計画を、秩序を乱すくだらないものとして切り捨てるのですか?」
「……」
私の言葉に、騎士団長は何も言わなかった。
ただ彼の表情は、確実に変わっていた。その表情からは、苦悩や同情といった気持ちが読み取れる。
恐らく彼は、私に協力してくれるだろう。それを理解した私は、心の中で密かに安堵するのだった。
25
お気に入りに追加
2,041
あなたにおすすめの小説
令嬢は大公に溺愛され過ぎている。
ユウ
恋愛
婚約者を妹に奪われた伯爵家令嬢のアレーシャ。
我儘で世間知らずの義妹は何もかも姉から奪い婚約者までも奪ってしまった。
侯爵家は見目麗しく華やかな妹を望み捨てられてしまう。
そんな中宮廷では英雄と謳われた大公殿下のお妃選びが囁かれる。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
妹とともに婚約者に出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
フリード伯爵は溺愛する自身の妹スフィアと共謀する形で、婚約者であるセレスの事を追放することを決めた。ただその理由は、セレスが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしセレスは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、セレスを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?
風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。
そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。
ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。
それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。
わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。
伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。
そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。
え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか?
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる