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19.手強い相手

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 イムティア様と話し合いをした私は、バルラット侯爵家の屋敷に来ていた。
 これからのことに関しては、ナルギスにも知っておいてもらう必要がある。その報告をしに来たのだ。
 という訳で、私は彼に王城でイムティア様と話したことを伝えた。それを聞き終えたナルギスは、顎に手を当てて目を瞑っている。恐らくこれからのことを考えているのだろう。

「その目論見が上手くいけば、王子とメレティア嬢を潰せるということ……それは、俺達にとって非常に有益なことだ。流石はラフェリア嬢、その手腕は見事としか言いようがない」
「そう言ってもらえるのはありがたいけれど、まだ成功もしていないことよ。褒められるようなことではないわ」
「あなたはメレティア嬢のことをよく知っている。そんなあなたの計画は成功する可能性は高い。故に、そちらのことは心配しなくてもいいだろう。後は王女イムティアに任せればいい。問題は、エルバラス侯爵家のことだ」

 ナルギスは、ゆっくりとため息をついた。
 それは恐らく、お父様が手強い相手だからなのだろう。
 甘やかされて育ってきたメレティアと違って、お父様はきちんとした侯爵である。そう簡単に、切り崩せる人ではないはずだ。

「長年取り入ってきた故に、エルバラス侯爵の黒い部分を俺はある程度知っている。しかしながら、それらの要素でエルバラス侯爵を追い詰めるのは難しい。侯爵は最低の人間ではあるが、馬鹿ではない。俺が知っている程度のことではびくともしないだろう」
「まあ、気に入っているとはいっても他家の子供に重要なことまでは教えないわよね……」

 ナルギスの言葉を受けて、私は少し考えることになった。
 お父様を失脚させるためには、強力な材料が必要である。しかし侮れないお父様のそういった一面を調べるのは、中々に骨が折れそうだ。

「……それなら発想を逆転させてみるべきね」
「何?」
「ナルギス、お父様の弱みを見つけるのは困難だわ。だから、弱みを探る以外の手段を取った方がいいと思うの」
「それは一体、どういう方法なのだ? 他に方法があるとは思えないのだが……」
「私達で、お父様の弱みを作るのよ」
「なんだって?」

 私の言葉に、ナルギスは目を丸めていた。
 どうやら、これは彼にとって予想外の方法であったようだ。

「メレティアのことをよく知っているように、私はお父様のこともよく知っているわ。彼がどういう行動をするのか、私にはわかる。だから、それを利用するの」
「何をするつもりなんだ?」
「これは、リスクを伴うことではあるけれど……」

 ナルギスの問いかけに、私はゆっくりと答える。
 私の作戦は、危険を伴う作戦だ。ただその作戦なら、あのお父様もきっと失脚させられるだろう。
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