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16.強固な協力

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 エルバラス侯爵家を手に入れるのと並行して、私にはやるべきことがあった。
 それは、王位のことだ。このままではアラヴェド様が王位を継承して、あのメレティアが王妃となる。できることなら、そんな結末は阻止したい。
 それにそもそもの話、王位とエルバラス侯爵家は最早切っても切り離せない関係である。エルバラス侯爵家を手に入れるためにも、妹の権力は削いでおきたい所だ。

「なるほど、エルバラス侯爵家でそんなことが……」

 そんなことを考えている私は、イムティア様の元にやって来ていた。お互いの状況を話し合いに来たのだ。

「ラフェリア嬢に心強い味方ができたということは、喜ばしいことですね……ただ、こちらの情勢はあまりよくありません」
「よくない?」
「ラフェリア嬢の妹であるメレティア嬢は、お兄様と馬が合うようです。その二人の様子に、お父様も絆されそうです。お二人の婚約は、恐らく認められるでしょう」

 メレティアの王妃への道は、着々と進んでいるらしい。
 それは確かに、あまりよくない状況である。アラヴェド様とメレティアの国王夫妻、それが成立してしまったらこの国は終わりだ。

「……本当に厄介なことになっているようですね。ただ、私にとってはあの二人の婚約が成立することはメリットもあります」
「メリット、ですか?」
「私とイムティア様は、それぞれ侯爵家と王位を狙っています。そのために必要なのは、メレティアとアラヴェド様の失脚です。つまり、私達が目指すべき道は同じです」

 二人の婚約によって、私とイムティア様の目指すべき目標は同じになった。
 これからはより密接に、手を結ぶことができる。それは、私達にとっては明確なメリットだといえるだろう。

「確かに強く手を結べるのは、いいことであるとは思います。しかしながら、それはあちらも同じなのではありませんか?」
「ええ、確かにそれはそうですね。しかしながら、あの二人の結びつきと私達の結びつきは同じではありません」
「同じではない?」
「メレティアも、そして恐らくアラヴェド様も、根本的に人を心から信用していません。あの二人が本当の意味で手を結ぶなんて、無理な話です。でも、私達は違います」
「それは……」

 私の言葉に、イムティア様は驚いたような表情をした。
 しかし彼女は、すぐに笑みを浮かべる。その表情は、私に王位を狙うと言っていた時と同じだ。

「ラフェリア嬢、どうかこれからもよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」

 私はイムティア様と固く握手を交わした。
 こうして私達は、お互いの目標のためにより強固な協力関係を築いたのだった。
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