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15.必要なこと

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 ナルギスという味方が得られたのは、私にとってもとても嬉しい誤算だった。
 当然のことながら、一人も二人の方が心強い。味方がいるだけで、心はとても軽くなっている。
 しかしながら、これからの道が困難であることは変わらない。私達は、しっかりと策を練る必要がある。

「とにかく相手に信頼されることは必要だ。こちらの立場が弱い以上、相手を油断させておく方がいい」
「ええ、それはなんとなく理解しているわ。でも、よくお父様に気に入られたわね?」

 とりあえず私は、密かに味方となってくれていたナルギスから知恵を借りることにした。
 エルバラス侯爵家を手に入れるという計画を、彼はずっと考えていた。そんな彼の考えを聞くというのは、私にとって必要なことだったのだ。

「エルバラス侯爵は、単純な性格だ。褒めて煽てていればいいだけだった。それから、これはあなたには言いたくないことだが……あなたのことに触れるのも特に有効だった」
「なるほど、確かにお父様は私のことを疎んでいるものね。普通の人ならそこには敢えて触れはしないでしょうし、有効な手といえるでしょうね。ただ問題は、その手が私には使えないということだけれど……」

 ナルギスが取っていた手は、とても有効であるように思えた。
 共通の敵の話題で盛り上がる。それはきっと、相手の心を開くためにはとてもいい方法だ。
 しかし現状、お父様の敵といえるのは私くらいである。その私自身が、私自身の悪口で盛り上がることなんてできるはずはない。

「とりあえず私は、従順な振りをしておくしかないのでしょうね……実際、そうしておけば結構機嫌がいい時もあるし、油断させるには丁度いい方法だと思うわ」
「それなら、俺も同じように従順な振りをしておくことにしよう。当面、そうすることによってやり過ごすことはできるはずだ。問題は、その裏でどのような行動をするかになるか」
「ええ、お父様達を失脚させる情報が必要ね。何か弱みを握れるといいのだけれど……」

 エルバラス侯爵家を手に入れるためには、お父様を上回る力を手に入れる必要がある。
 私達が力をつけるのはもちろんのこと、お父様から力を削ぐことも視野に入れておくべきだ。それらを両立させて、私達はやっとこの侯爵家を手に入れられるのである。

「険しい道のりではあるけれど、困難という訳ではないと思っているわ。ナルギス、そのためにもあなたの力を貸して頂戴ね?」
「もちろんだ。あなたのことは俺が守ってみせるとも」

 これから私達は、困難に立ち向かうことになるだろう。
 しかしきっと大丈夫だ。二人でならば、きっと乗り越えられる。
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