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12.知らない味方

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「ごめんなさい、あなたが何を言っているのか、私にはよくわからないのだけれど……」

 先程から、ナルギスという男の言動には悩まされてきた。
 今の彼の告白は、その中でも最もわからないものである。
 私と彼には、そこまでの繋がりはない。幼少期に少し会ったことがあるだけで、別に好意を抱かれるような何かがあったとは思えないのだが。

「よくわからないか。それも当然のことであるだろう。俺は今まで、あなたに何もしてあげられなかった。そんな男から好意を向けられて、嬉しいと思う方が無理な話だ」
「ああいえ、そういうことではなくて……」

 なんというか、彼との会話はずっとどこか噛み合っていないような気がする。
 それはきっと、彼の中ではこの状況は腑に落ちていて、私は腑に落ちていないからこそ起こるすれ違いなのだろう。
 そのすれ違いをなんとか埋めたい所だ。彼の想いを紐解かなければ、私はこの状況を受け入れられそうにない。

「順を追って説明してくれないかしら? あなたは、私に好意を抱いているというけれど、私達はそんなに親しくしていた訳でもないし、あなたがお父様を欺くに至った経緯がそこにあるというなら、最初から説明してもらいたいわ」
「なるほど、あなたは俺との出会いは覚えていないか。まあ、それも仕方ないことだな。あなたにとってあの出会いは、きっと些細なものだったはずだ」
「出会い……?」

 私は、ナルギスとの出会いについて思い出してみることにした。
 彼は確か、お父様に紹介されたような気がする。友人の息子を一応紹介しておく。そのような感じだったはずだ。
 その特に劇的でもない出会いが、ナルギスにとっては特別だったのだろうか。

「あの時からあなたは、可憐で美しかった。所謂、一目惚れというものになるのだろうか。俺は、あなたに惚れこんでいたのだ」
「そ、そうだったのね……え? その時からずっと?」
「ああ、俺はあなたに好意を抱き、あなたのために生きたいと思った。もちろん、その時の一瞬で人生を決めたという訳ではない。実際に話し、あなたのことを色々と調べて、俺はあなたに尽くす生き方をしたいと思った」

 正直言って、ナルギスは少し変な人ではある。
 ただ、彼はどこまでも一途で真っ直ぐであるようだ。幼少期に惚れた私のために、人生を捧げようとするなんて普通はできることではない。
 そこまで想われていたという事実は、とても嬉しいことではあった。どうやら私には、知らない味方がいたようである。
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