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10.婚約者との対面
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イムティア様の志を知ったことによって、私の考えは少し変わっていた。
代々続いてきたエルバラス侯爵家を、両親や妹にこれ以上自由にさせたくはない。それが今の私の想いだ。
故にここに戻って来られたのは幸いだった。厄介な存在であるメレティアも今はいないし、今の内に何かしらの足掛かりを掴んでおきたい所である。
「まずは、ナルギスね……」
そこで私は、ゆっくりと深呼吸をした。
驚くべきことに、バルラット侯爵家のナルギスは今日この家を訪ねて来ているらしい。
婚約を知らされてすぐに対面することになるなんて思っていなかった。とりあえず私は、彼のことをやり過ごさなければならないようだ。
「……ラフェリアです」
「ラフェリア嬢か……待っていたぞ。どうぞ、入ってくれ」
「失礼します……」
私は、ゆっくりと客室に入っていく。
その中にいたのは、私と同年代の青年だ。彼とこうして直接顔を合わせるのは、いつ振りだっただろうか。
幼い頃と比べると、彼は随分と背が高くなっているような気がした。どちらかというと、可愛らしかった印象も変わっている。凛々しい男性といった感じだ。
「ふむ……」
幼少期、彼は普通の少年だった。
そんな彼がまさか、お父様なんかを尊敬するようになるなんて思ってもいなかったことである。
今は柔和な表情をしている彼だが、その本性はもしかしたらお父様と同じかもしれない。そう考えると、なんだか少し気分が悪くなってくる。
「久し振りだな、ラフェリア嬢。あなたは変わっていないな……」
「そうでしょうか?」
「ああ、幼い頃と変わらぬ麗しさだ」
「……え?」
ナルギスは、私の前でゆっくりと跪いた。
その態度に、私は少し面食らってしまう。思っていたよりも、柔らかい態度だからだ。
これはどういう趣なのだろうか。お父様の手の者なら、もう少し高圧的な態度をしてくると思っていたのだが。
「あなたとこうして再会できたのは、運命の悪戯としか言いようがない。本来であるならば、あなたの妹君と結ばれるはずだったというのに……」
「あ、えっと……」
「おっと、すまない。こんな風にはしゃいではならないな。しかし俺は嬉しいのだ。この幸運が、嬉しくて仕方ないのだ」
「な、何を……」
ナルギスの態度に、私は混乱していた。
彼が何を言っているのか、よくわからない。頭の中に、疑問がいっぱいだ。
しかしもしかしたら、ナルギスは私が思っていたような人物ではないのかもしれない。彼の態度に、私はそんなことを思うのだった。
代々続いてきたエルバラス侯爵家を、両親や妹にこれ以上自由にさせたくはない。それが今の私の想いだ。
故にここに戻って来られたのは幸いだった。厄介な存在であるメレティアも今はいないし、今の内に何かしらの足掛かりを掴んでおきたい所である。
「まずは、ナルギスね……」
そこで私は、ゆっくりと深呼吸をした。
驚くべきことに、バルラット侯爵家のナルギスは今日この家を訪ねて来ているらしい。
婚約を知らされてすぐに対面することになるなんて思っていなかった。とりあえず私は、彼のことをやり過ごさなければならないようだ。
「……ラフェリアです」
「ラフェリア嬢か……待っていたぞ。どうぞ、入ってくれ」
「失礼します……」
私は、ゆっくりと客室に入っていく。
その中にいたのは、私と同年代の青年だ。彼とこうして直接顔を合わせるのは、いつ振りだっただろうか。
幼い頃と比べると、彼は随分と背が高くなっているような気がした。どちらかというと、可愛らしかった印象も変わっている。凛々しい男性といった感じだ。
「ふむ……」
幼少期、彼は普通の少年だった。
そんな彼がまさか、お父様なんかを尊敬するようになるなんて思ってもいなかったことである。
今は柔和な表情をしている彼だが、その本性はもしかしたらお父様と同じかもしれない。そう考えると、なんだか少し気分が悪くなってくる。
「久し振りだな、ラフェリア嬢。あなたは変わっていないな……」
「そうでしょうか?」
「ああ、幼い頃と変わらぬ麗しさだ」
「……え?」
ナルギスは、私の前でゆっくりと跪いた。
その態度に、私は少し面食らってしまう。思っていたよりも、柔らかい態度だからだ。
これはどういう趣なのだろうか。お父様の手の者なら、もう少し高圧的な態度をしてくると思っていたのだが。
「あなたとこうして再会できたのは、運命の悪戯としか言いようがない。本来であるならば、あなたの妹君と結ばれるはずだったというのに……」
「あ、えっと……」
「おっと、すまない。こんな風にはしゃいではならないな。しかし俺は嬉しいのだ。この幸運が、嬉しくて仕方ないのだ」
「な、何を……」
ナルギスの態度に、私は混乱していた。
彼が何を言っているのか、よくわからない。頭の中に、疑問がいっぱいだ。
しかしもしかしたら、ナルギスは私が思っていたような人物ではないのかもしれない。彼の態度に、私はそんなことを思うのだった。
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