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9.不機嫌な両親
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実家に戻ってきた私は、お父様とお母様から呼び出されていた。
メレティアが言っていた通り、婚約の話をされるのだろう。そう思っていた私は、二人の様子に少しだけ驚くことになった。
「ふん……」
「まったく……」
二人は、私のことを不服そうに見ている。楽しそうにしていたメレティアとは、正反対の態度だ。
基本的に、この両親は妹のことを溺愛している。故に、妹の望み通りになっている現状を喜ぶはずだ。
それのなのに、このように不機嫌なのは珍しい。今までとは少し異なる態度だ。
「ラフェリア、メレティアが第一王子と婚約したことはお前も知っているな?」
「ええ、知っていますが……」
「このエルバラス侯爵家の子供やお前とメレティアだけだ。メレティアは、アラヴェド殿下の妻になる。王妃になるのだ。つまり、この家を継ぐのはお前と婚約する者となる」
「なるほど……」
お父様の言葉によって、私は二人の態度の理由がわかった。
恐らく二人は、私が侯爵家を手に入れるということが気に入らないのだ。
メレティアが家を去って、嫌っている私が侯爵家に残る。妹を溺愛している二人にとって、それはとても不本意なことなのだろう。
しかしそれでも、メレティアの望みは叶えたい。二人の心情は、そんな所だろうか。
「お前の婚約者は、既に決まっている。本来ならば、メレティアの婚約者になるはずだった男だ」
「メレティアの婚約も、決まっていたのですか?」
「話が出ていたというだけに過ぎない。結果的に、その婚約はお前に宛がうことになったがな……」
メレティアの婚約に関する話は、初耳である。ただ、考えてみればそれは別におかしな話ではない。
その相手が誰であるかは、気になる所だ。その相手によって、私の今後はきっと大きく変わってくる。
「一体、どこの誰との婚約なのですか?」
「バルラット侯爵家の次男、ナルギスがお前の婚約相手だ。ナルギスのことは、お前もよく知っているだろう?」
「……ええ」
お父様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
バルラット家は、エルバラス侯爵家と懇意としている家である。その家の次男ナルギスは、お父様のことを尊敬している人物だ。
つまり私の婚約者は、お父様の手の者ということになる。それは少々、厄介な事実だ。
「言っておくが、お前の自由にはさせないぞ? これからもこの家は、私のものだ。エルバラス侯爵家は、メレティアのために存在しているのだ」
やはり、お父様はそのつもりであるらしい。
しかし私は、ただ従うつもりはなかった。この状況は、私にとっても好機である。このエルバラス侯爵家を手に入れられるチャンスなのだ。
メレティアが言っていた通り、婚約の話をされるのだろう。そう思っていた私は、二人の様子に少しだけ驚くことになった。
「ふん……」
「まったく……」
二人は、私のことを不服そうに見ている。楽しそうにしていたメレティアとは、正反対の態度だ。
基本的に、この両親は妹のことを溺愛している。故に、妹の望み通りになっている現状を喜ぶはずだ。
それのなのに、このように不機嫌なのは珍しい。今までとは少し異なる態度だ。
「ラフェリア、メレティアが第一王子と婚約したことはお前も知っているな?」
「ええ、知っていますが……」
「このエルバラス侯爵家の子供やお前とメレティアだけだ。メレティアは、アラヴェド殿下の妻になる。王妃になるのだ。つまり、この家を継ぐのはお前と婚約する者となる」
「なるほど……」
お父様の言葉によって、私は二人の態度の理由がわかった。
恐らく二人は、私が侯爵家を手に入れるということが気に入らないのだ。
メレティアが家を去って、嫌っている私が侯爵家に残る。妹を溺愛している二人にとって、それはとても不本意なことなのだろう。
しかしそれでも、メレティアの望みは叶えたい。二人の心情は、そんな所だろうか。
「お前の婚約者は、既に決まっている。本来ならば、メレティアの婚約者になるはずだった男だ」
「メレティアの婚約も、決まっていたのですか?」
「話が出ていたというだけに過ぎない。結果的に、その婚約はお前に宛がうことになったがな……」
メレティアの婚約に関する話は、初耳である。ただ、考えてみればそれは別におかしな話ではない。
その相手が誰であるかは、気になる所だ。その相手によって、私の今後はきっと大きく変わってくる。
「一体、どこの誰との婚約なのですか?」
「バルラット侯爵家の次男、ナルギスがお前の婚約相手だ。ナルギスのことは、お前もよく知っているだろう?」
「……ええ」
お父様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
バルラット家は、エルバラス侯爵家と懇意としている家である。その家の次男ナルギスは、お父様のことを尊敬している人物だ。
つまり私の婚約者は、お父様の手の者ということになる。それは少々、厄介な事実だ。
「言っておくが、お前の自由にはさせないぞ? これからもこの家は、私のものだ。エルバラス侯爵家は、メレティアのために存在しているのだ」
やはり、お父様はそのつもりであるらしい。
しかし私は、ただ従うつもりはなかった。この状況は、私にとっても好機である。このエルバラス侯爵家を手に入れられるチャンスなのだ。
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