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8.似た者同士

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 メレティアと王城で会った一か月後、私は再び彼女と王城で対面していた。
 しかし今回は、前回と違う点がある。メレティアの隣には、アラヴェド様がいるのだ。
 二人は、私に対して下卑た笑みを向けている。どうやら二人は、何か悪いことを考えているらしい。

「お姉様、本日はわざわざご足労いただきありがとうございます。まあ、屋敷から王城に来たのは私も同じなんですけどね?」
「ふふ、驚いているようだな? それはそうだろう。僕と彼女が、こうして並んでいるということは君にとってはひどく予想外のことであるはずだ」

 メレティアとアラヴェド様の言葉を、私はそれ程よく聞いていなかった。他のことを、考えていたからだ。
 二人が私を呼び出した。そこからは、あることが予想できる。もしも想像している通りなら、これは色々と考えを改めるべきかもしれない。

「見ての通り、僕はメレティア嬢と懇意にしている。彼女は、聡明で優秀な女性だ。彼女こそが王妃として相応しい人であると、僕は思っている」
「お褒めいただきありがとうございます、アラヴェド様」
「そこで僕は、君との婚約を破棄する。やはり君は、僕に相応しい女性ではない」

 アラヴェド様は、私に対して堂々とそんなことを言ってきた。
 それは予想していたことである。故に驚きは特にない。
 ただ、私の頭は回転していた。これからどうするべきか、一気に考えなければならなくなっていたからだ。

「父上も、同じエルバラス侯爵家の人間を婚約者とするなら、納得してくれるだろう。君からメレティア嬢に婚約者が移ったとしても情勢が変わることはない」
「ああ、私達のお父様とお母様も、今回の件には納得してくれています。二人とも、私達が最も幸せになれる結論を求めていますからね?」

 イムティア様は、どうしているのだろうか。私はそれが気になっていた。
 彼女からは、王位に関する色々なことを聞いている。今回の婚約破棄によって、彼女の目論見のいくつかは崩れるかもしれない。そのことが少し心配だ。

「お姉様が今後どういう身の振り方をすることになるかは、お父様とお母様が知らせてくれると思います。悪いようにはしませんからご安心を」
「ラフェリア嬢、君は家族に恵まれているようだな? 妹も両親も君のことを尊重しようとしてくれる。感謝するべきだ」

 二人は、私に対して好き勝手言った後笑い合っていた。
 本当に、二人は似た者同士である。人を心底馬鹿にした様子の二人に、私はそのようなことを思うのだった。
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