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5.話し合うべきこと

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「まず前提としてあるのが、あなたは兄上と結婚しているということです。婚約の状態であるならば、まだ良かったのですが、兄上は正式に結婚してから失踪しました。それは、非常に厄介なことです」
「厄介……」
「結果的に、あなたはセレント公爵家に縛られることになってしまいました。恐らく、これは兄上が意図的に仕組んだものでしょう。どうしてそんなことをしたのか、それは少々理解ができませんが……」

 マディード様は、私に対してそのように言ってきた。
 彼の言っていることは、理解できた。
 私は、セレント公爵夫人となっている。その現状は、あまり嬉しくないものだ。

 このセレント公爵家から出て行く。それは、もちろんできるだろう。
 だが、そうすると私は離婚するということになる。貴族として、それは中々厳しいものだ。

「あなたがセレント公爵家から離れていきたいと思うのは当然のことです。それを止める権利も、止めるつもりもこちらにはありません。そして、どちらの判断をしても、僕達はあなた及びアルノア侯爵家を尊重すると約束します」
「それは……」
「それは、僕達の責務であり、謝罪の気持ちでもあると思っています。それをまずは把握していただきたいのです」

 私は、セレント公爵家から離れるかどうかを決めなければならなかった。
 どちらの判断にも、メリットデメリットがある。それを考えて、私は判断しなければならなかったのだ。

 私の立場というものは、結構複雑なものである。
 そんな私にとって、どうするべきかはフライグ様が出て行ってからずっと考えていることだった。

「現在、実家にも手紙を送っています。その答え次第で、私が今度どうするかは決めるつもりです」
「時間はいくらかかっても構いません。こちらは、いつまでも待つつもりです」
「ありがとうございます」

 私の今後は、実家とも話し合わなければならないことだった。そのため、その場で答えを出すことはできなかったのである。
 そんな中、私はとあることを考えていた。それは、バルートのことだ。
 彼は、私が去った場合、どうなるのだろうか。そのことが、頭から離れなかったのである。

「あの……バルート君は」
「バルートのことですか……そうですね。それは、色々と考えている所です」
「考えている所……それは、私の判断によって変わるということでしょうか?」
「ええ、それもありますが、誰が彼を引き取るのかという問題もあるのです。あまりこういうことは言いたくありませんが、セレント公爵家も皆の関係が良好という訳ではないのです」
「そうですか……」

 疑問をぶつけてみた所、マディード様はそんな答えを返してきた。
 それは、あまり良くない答えである。事情がそこまでわかる訳ではないが、なんとなくバルートの未来が明るくないような、そんな答えに思えたのだ。
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