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42.忘れられない生活(モブ視点)
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「……懲りない奴らだな」
金貸しであるバランドは、今まで様々な人間を見てきた。
そんな彼は、貴族の相手も何度かしたことがある。ギャンブルなどに溺れると、彼らはその莫大な財産を一瞬の内に消失させてしまうのだ。
そしてそんな貴族の多くは、破産した後もする前と同じ生活を送る。彼はかつての生活を忘れられないのだ。
「俺達がどういう存在なのか、本当にわかっているのか? ブラックリストに載っているような奴らに金を貸す俺達がどういう存在か、わかっていない訳じゃないだろう?」
「……それなら、私達にどうしろというのです?」
「貴族みたいな生活はもうやめた方がいいんじゃないか? もっとも、それができないからこうしてもう一度金を借りに来たんだろうが……」
バランドの目の前には、イフェリアとその母親がいた。
財産を失ってからも、エルシエット伯爵家の人々は貴族の時と同じような生活を続けていた。裕福な生活に慣れてしまった彼女達は、貧乏な生活などできなかったのだ。
故に三人は、再びドナテリア一家を訪ねて来ていた。三人が頼れるのは、そこだけだったのである。
「言っておくが、こっちももうそんなに出すことはできないぞ? あんた達には、担保にできるものもないだろう?」
「……ええ」
「……ああいや、ないという訳ではないか。そうだな、いい機会だ。あんた達に仕事を紹介してやろう。割のいい仕事だ」
「……?」
バランドは、ある種の確信を得ていた。この三人は、ずっとそんな生活を続けていくのだろう。
それに対して、バランドは特に同情していなかった。自業自得だとしか思えなかったのである。
そんな者達は、彼にとってはいい金づるであった。バランドはとりあえず目の前の二人を、使い潰すことにした。最早彼には、容赦も情けもない。
「イフェリア・エルシエット、特にあなたは稼げそうだ。元貴族の令嬢という肩書は、それなりに価値があるものだ」
「何を言っているんですか?」
「あなた、イフェリアに何を……」
「今の生活を続けるためには、金が必要なんだろう? 安心しろ、旦那程に危険がある仕事じゃない。ただ俺達の経営する店で働いてもらうというだけだ」
エルシエット伯爵家の面々は、どんどんと深みに嵌っていっていた。
稼いでは搾取される生活、嵌れば嵌る程に抜け出すことができない生活に、足を踏み入れようとしていた。
そんな彼を止めてくれる者はいない。正常な判断をできる者は、既に彼らの傍からはいなくなってしまっているのだ。
金貸しであるバランドは、今まで様々な人間を見てきた。
そんな彼は、貴族の相手も何度かしたことがある。ギャンブルなどに溺れると、彼らはその莫大な財産を一瞬の内に消失させてしまうのだ。
そしてそんな貴族の多くは、破産した後もする前と同じ生活を送る。彼はかつての生活を忘れられないのだ。
「俺達がどういう存在なのか、本当にわかっているのか? ブラックリストに載っているような奴らに金を貸す俺達がどういう存在か、わかっていない訳じゃないだろう?」
「……それなら、私達にどうしろというのです?」
「貴族みたいな生活はもうやめた方がいいんじゃないか? もっとも、それができないからこうしてもう一度金を借りに来たんだろうが……」
バランドの目の前には、イフェリアとその母親がいた。
財産を失ってからも、エルシエット伯爵家の人々は貴族の時と同じような生活を続けていた。裕福な生活に慣れてしまった彼女達は、貧乏な生活などできなかったのだ。
故に三人は、再びドナテリア一家を訪ねて来ていた。三人が頼れるのは、そこだけだったのである。
「言っておくが、こっちももうそんなに出すことはできないぞ? あんた達には、担保にできるものもないだろう?」
「……ええ」
「……ああいや、ないという訳ではないか。そうだな、いい機会だ。あんた達に仕事を紹介してやろう。割のいい仕事だ」
「……?」
バランドは、ある種の確信を得ていた。この三人は、ずっとそんな生活を続けていくのだろう。
それに対して、バランドは特に同情していなかった。自業自得だとしか思えなかったのである。
そんな者達は、彼にとってはいい金づるであった。バランドはとりあえず目の前の二人を、使い潰すことにした。最早彼には、容赦も情けもない。
「イフェリア・エルシエット、特にあなたは稼げそうだ。元貴族の令嬢という肩書は、それなりに価値があるものだ」
「何を言っているんですか?」
「あなた、イフェリアに何を……」
「今の生活を続けるためには、金が必要なんだろう? 安心しろ、旦那程に危険がある仕事じゃない。ただ俺達の経営する店で働いてもらうというだけだ」
エルシエット伯爵家の面々は、どんどんと深みに嵌っていっていた。
稼いでは搾取される生活、嵌れば嵌る程に抜け出すことができない生活に、足を踏み入れようとしていた。
そんな彼を止めてくれる者はいない。正常な判断をできる者は、既に彼らの傍からはいなくなってしまっているのだ。
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