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23.穏やかな伯爵
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「えっと……あなたが、アルシエラさんですか?」
「あ、はい。私がアルシエラです。アルシエラ・エルシエット、アルシャナの娘です」
目の前の男性は、私の顔をじっと見てきた。
見るからに穏やかそうな見た目をしたその男性は、このランバット伯爵家の現当主である。
もっとも、彼は母にとっては義理の兄にあたる人物だ。要するに、彼はランバット伯爵家にとってはお婿さんにあたる。つまり、母との血の繋がりはない。
「なるほど、確かにアルシャナの面影があるような気がします。もっとも、私は彼女とそこまで深く関わっていた訳ではありませんから、断定することはできませんが……」
「そうですか……」
「しかしながら、あなた方が嘘をついているとは思っていませんよ。そちらにおられるギルバートさんのことは私も知っています。ラナキンス商会の重役が、まさか詐欺の片棒を担いでいるなんてことはないでしょうからね」
ランバット伯爵は、私よりもむしろギルバートさんに注目しているようだった。
領地の有力者が同行していることによって、私の話の信憑性は高まったようである。
少々複雑な気持ちではあるが、信じてもらえているなら問題はない。私はとにかく、母のことが聞ければそれでいいのだから。
「それで、母とランバット伯爵家に関することなんですけれど……」
「その話ですか……しかしそれは、私よりも妻に聞いた方がいいでしょう。色々とあったとは聞いていますが、所詮私は部外者に近しい存在です。問題の根底にあるのは、どうやら妻とアルシャナの間にあるようですから」
私の質問に対して、ランバット伯爵は少し困ったような様子でそう答えてくれた。
詳しいことを、彼は本当に知らないのだろう。その困惑からは、それが読み取れる。
「えっと、それなら夫人はどちらにいらっしゃるのですか?」
「妻は今、ボランティア活動に参加しています。帰って来るのは恐らく夕刻になるでしょう。申し訳ありませんが、その活動の場所に行くか、後日改めて訪ねていただくか、ということになるでしょうな……」
「ボランティア……」
「活動……」
「おや……」
ランバット伯爵の説明に、私とギルバートさんは顔を見合わせた。
私達にとって、夫人がやっていることは非常に既視感があったからだ。
もちろん、貴族たるものそういう活動に参加するのはむしろ当たり前といえるのかもしれない。しかし理想がそこまで実現できていない中で、その二人の一致はなんというか繋がりを感じさせるものだった。
「あ、はい。私がアルシエラです。アルシエラ・エルシエット、アルシャナの娘です」
目の前の男性は、私の顔をじっと見てきた。
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もっとも、彼は母にとっては義理の兄にあたる人物だ。要するに、彼はランバット伯爵家にとってはお婿さんにあたる。つまり、母との血の繋がりはない。
「なるほど、確かにアルシャナの面影があるような気がします。もっとも、私は彼女とそこまで深く関わっていた訳ではありませんから、断定することはできませんが……」
「そうですか……」
「しかしながら、あなた方が嘘をついているとは思っていませんよ。そちらにおられるギルバートさんのことは私も知っています。ラナキンス商会の重役が、まさか詐欺の片棒を担いでいるなんてことはないでしょうからね」
ランバット伯爵は、私よりもむしろギルバートさんに注目しているようだった。
領地の有力者が同行していることによって、私の話の信憑性は高まったようである。
少々複雑な気持ちではあるが、信じてもらえているなら問題はない。私はとにかく、母のことが聞ければそれでいいのだから。
「それで、母とランバット伯爵家に関することなんですけれど……」
「その話ですか……しかしそれは、私よりも妻に聞いた方がいいでしょう。色々とあったとは聞いていますが、所詮私は部外者に近しい存在です。問題の根底にあるのは、どうやら妻とアルシャナの間にあるようですから」
私の質問に対して、ランバット伯爵は少し困ったような様子でそう答えてくれた。
詳しいことを、彼は本当に知らないのだろう。その困惑からは、それが読み取れる。
「えっと、それなら夫人はどちらにいらっしゃるのですか?」
「妻は今、ボランティア活動に参加しています。帰って来るのは恐らく夕刻になるでしょう。申し訳ありませんが、その活動の場所に行くか、後日改めて訪ねていただくか、ということになるでしょうな……」
「ボランティア……」
「活動……」
「おや……」
ランバット伯爵の説明に、私とギルバートさんは顔を見合わせた。
私達にとって、夫人がやっていることは非常に既視感があったからだ。
もちろん、貴族たるものそういう活動に参加するのはむしろ当たり前といえるのかもしれない。しかし理想がそこまで実現できていない中で、その二人の一致はなんというか繋がりを感じさせるものだった。
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